警察活動の最前線
匿名・流動型犯罪グループの一掃に向けて
宮城県警察本部刑事部組織犯罪対策局
組織犯罪対策第一課特殊詐欺対策室特殊詐欺対策係
兼生活安全部生活安全企画課犯罪抑止対策係
鈴木 裕介

特殊詐欺の被害額は、昨年、400億円を超えました。こうした深刻な被害の背後には、実行犯として犯罪に加担した者のみならず、SNS等を介して募集した若年者等を実行犯として使い捨てる、指示役の存在があります。
匿名・流動型犯罪グループといわれる集団は、匿名性の高いスキームによって実行犯等の人的資源を確保し、離合集散を繰り返しながら特殊詐欺等を敢行しており、その取締りは一層困難の度を増しています。
宮城県警察では、こうした匿名・流動型犯罪グループによる特殊詐欺等の抑止及び取締りを目的に、生活安全部門や刑事部門等の各部門の人員が結集したプロジェクトチームを発足させており、私も、その一員として対策の強化に当たっています。
SNS等において犯罪の実行犯を募集する投稿は雨後の筍そのもので、罠とも知らず「高額報酬」という欺瞞に釣られてしまう者が少なくありません。プロジェクトチームでは、SNS等に犯罪の実行犯を募集する投稿をしたグループのメンバーについて、職業安定法違反で検挙するとともに、当該募集に応募した実行犯による詐欺等の共犯としても検挙することで、犯罪の実行犯を募集する投稿に関する取締りを強化しています。
匿名・流動型犯罪グループの存在が社会に影を落とす中、有効な対策を講じ、これを一掃することが私たちの使命であり、誇りだと感じています。

金融機関と連携して「出し子」被疑者を検挙
前 広島県警察本部刑事部組織犯罪対策第一課(現 広島県広島東警察署次長)
志田原 康江

特殊詐欺グループは、県内にとどまらず全国各地で多くの高齢者から多額の現金を奪い、拠点を海外にまで広げて捜査をかく乱させています。
組織犯罪対策第一課の特殊詐欺事件捜査室では、金融機関と「検挙」に向けた連携を強力に推進して、受け子・出し子を「逃がさず検挙」することをミッションに掲げています。
これまでも、金融機関には、携帯電話を使用しながらのATMでの払出しや高額の払出しをする利用者への声掛け等、抑止面で協力をいただいていますが、依然として被害に歯止めがかからない状況にありました。
このため、金融機関が有する情報を警察に対して迅速に提供していただくなど、「検挙」の観点でも連携を強化することにしたのです。この結果、実際に被疑者を短時間で検挙した事例もあるほか、所要の捜査によって、被害金を被害者に返還して被害を回復できる期待も高まります。
金融機関にとっても預金者の財産を守ることにつながるので、預金者と金融機関の利益を守り、被疑者の検挙という警察の目的も達成できるトリプルウィンの連携です。
今後も特殊詐欺を根絶するため、被疑者の徹底検挙、犯罪組織の壊滅を目指して特殊詐欺対策に取り組んでいきます。

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。