6 犯罪収益対策
匿名・流動型犯罪グループは、獲得した犯罪収益について巧妙にマネー・ローンダリングを行っている。その手口は、コインロッカーを使用した現金の受け渡し、架空・他人名義の口座を使用した送金、他人の身分証明書等を使用した盗品等の売却、暗号資産・電子マネー等の使用、犯罪グループが関与する会社での取引に仮装した出入金、外国口座の経由等、多岐にわたり、捜査機関等からの追及を回避しようとしている状況がうかがわれる。
犯罪収益が最終的に行き着く先は、中核的人物であることから、匿名・流動型犯罪グループから犯罪収益を剝奪し、その還流を防ぐため、犯罪グループの資金の流れを徹底的に追跡、分析している。
また、国家公安委員会及び警察庁においては、犯罪収益移転防止法に基づき、疑わしい取引の集約、整理及び分析を行っている。具体的には、過去に届け出られた疑わしい取引に関する情報、警察が蓄積した情報及び公刊情報等を活用し、近年多種多様な方法で資金獲得活動を繰り返す匿名・流動型犯罪グループの実態の解明を行っている。
疑わしい取引に関する情報を総合的に分析した結果については、関係する捜査機関等へ提供している。警察庁が分析結果を捜査機関等へ提供した件数は毎年増加しており、令和5年中は過去最多の2万1,730件であった。
さらに、警察では、令和4年12月に法定刑が引き上げられた組織的犯罪処罰法(犯罪収益等隠匿・収受)等を積極的に適用するなど、適正な科刑の実現を目指した取締りを推進している。
このほか、実態のない法人が詐欺等の犯罪収益の隠匿等に悪用されている実態がある。警察としては、これらの取締りを推進するとともに、関係機関と連携し、こうした行為を防止するための対策を講じることとしている。


CASE
無職の男(22)は、フィリピンに犯行拠点を置き、広域的に特殊詐欺等を敢行していたグループの「受け子」、「出し子」兼現金回収・運搬役として活動し、令和4年5月、同グループによる窃盗や強盗等によって得た犯罪収益である現金約100万円を、首謀者名義の銀行口座に偽名を用いて振込送金した。令和5年5月、同男を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で逮捕した(警視庁)。