2 匿名・流動型犯罪グループに新たに加担する者への対策
(1)匿名・流動型犯罪グループによる犯罪実行者の募集への対策
近年、SNS等のインターネット上において犯罪実行者を募集する内容が掲載されている実態がみられる。こうした犯罪実行者募集情報においては、「高額バイト」等の表現が用いられたり、仕事の内容を明らかにすることなく著しく高額な報酬を示唆したりするなど、犯罪の実行犯を募集する投稿であることを直接的な表現で示さないものがみられる。令和5年中に特殊詐欺の「受け子」等として検挙した被疑者のうち41.8%が、「受け子」等になった経緯として「SNSから応募した」旨を供述するなどしている。こうした犯罪実行者募集情報は、青少年等が安易に特殊詐欺をはじめとする犯罪に加担する契機となっている。
警察では、関係機関・団体等と連携し、このような犯罪の実行者を生まないための対策を多角的に推進している。

① インターネット・ホットラインセンターの運用
警察庁では、一般のインターネット利用者等から、違法情報等に関する通報を受理し、警察への通報、サイト管理者への削除依頼等を行うインターネット・ホットラインセンター(IHC)(注1)を運用している。インターネット上に犯罪実行者募集情報が氾濫している状況を踏まえ、令和5年9月、IHCにおいて取り扱う対象である重要犯罪密接関連情報(注2)の類型に「犯罪実行者募集情報」を追加し、当該情報の排除を実施している。
また、警察では、SNSにおける返信(リプライ)機能を活用し、犯罪実行者募集情報の投稿者等に対する個別警告等を推進している。
IHCの運用状況については、図表特-11及び図表特-12のとおりである(注3)。
注1:117頁参照(第3章)
注2:個人の生命・身体等に危害を加えるおそれが高い重要犯罪等と密接に関連する情報。具体的には、例えば、拳銃等の譲渡等を直接的かつ明示的に誘引等する情報、爆発物・銃砲の製造を直接的かつ明示的に助長等していると認められる情報、殺人等を直接的かつ明示的に請負等する情報等をいう。
注3:数値は、IHCの公表資料による。

IHCに関する広報啓発資料


② サイバー空間からの違法・有害な労働募集の排除
求人サイト等においても犯罪実行者募集情報が掲載される実態があったことから、警察では、これを排除するため、求人メディア等の業界団体や事業主への働き掛けについて、都道府県労働局等の取組を支援するなどしている。
また、犯罪実行者募集情報等の発信が、職業安定法に規定する「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」での「労働者の募集」等として違法行為に該当することに鑑み、この種の犯罪の取締りを推進している。
CASE
無職の女(26)は、令和5年7月、特殊詐欺の「受け子」等をさせる目的で、SNSを利用して、「受け子募集」、「金額で10万円~30万円報酬で渡します」などと記載した求人情報を投稿した。同年10月、同女を職業安定法違反(有害業務の労働者募集)で逮捕した(宮城)。
(2)青少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させない教育・啓発
匿名・流動型犯罪グループは、犯罪を敢行するに当たって、SNS等において犯罪の実行者を募集している。目先の利益を手に入れるため安易にこれに応募した青少年が、「指示されるままに次々と犯罪を敢行し、その上、一切の報酬が支払われなかった」、「犯罪グループから警察に密告され、逮捕された」といった事例にみられるように、犯罪グループは、青少年を都合よく利用するなど、言わば「使い捨て」にしている実態が認められる。
警察では、青少年が事の重大性を十分に認識することなく、アルバイト感覚で犯罪に加担してしまうことのないよう、関係機関とも連携して、様々な機会や広報媒体を活用して広報啓発を強化している。令和5年7月には、少年が犯罪実行者募集情報への応募をきっかけに犯罪組織に使い捨てにされ、検挙されるまでの実態を紹介した広報資料(注)を作成し、非行防止教室等において、犯罪実行者募集情報の実態、犯罪へ加担することの危険性、犯罪組織の悪質性について発信している。

青少年に対する広報啓発資料