第7章 警察活動の支え

第2節 国民の期待と信頼に応えるための警察運営

1 国民の期待と信頼に応える警察

(1)監察の実施と苦情を活用した業務改革の推進

① 監察

警察庁及び都道府県警察では、その能率的な運営及び規律の保持に資するために、国家公安委員会が定める監察に関する規則に基づき、厳正な監察を実施している。

 
図表7-19 監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)
図表7-19 監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)

令和5年(2023年)度中、警察庁においては、都道府県警察等に対して監察を実施し、警護の検証・見直しを踏まえた各種施策及びサイバー空間の脅威に関する諸対策の推進状況について指導するなど業務改善を図った。

② 苦情を活用した業務改革の推進

都道府県警察では、職員の職務執行に対する苦情に誠実に対応するとともに、個々の苦情やその傾向を踏まえて業務改善を図るなど、苦情を活用した組織的な業務改革を推進している。

(2)適正な予算執行の確保

警察では、適正な予算執行を確保するため、次のような取組を行っている。

① 警察が行う会計監査

国家公安委員会が定める会計の監査に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長及び方面本部長は、監査手法に改善・工夫を加えながら、一層適正な会計経理を推進するため、会計監査を実施している。

令和5年度中、警察庁においては、警察庁内部部局、附属機関、地方機関及び都道府県警察のうち、93部署を対象に会計書類の点検を行うとともに、捜査費の執行に直接携わった捜査員1,046人を含む2,131人に対して聞き取りを実施するなどした。

② 会計業務の改善に係る取組

警察庁では、会計業務の改善に関する取組を全庁を挙げて推進するため、関係職員から構成される警察庁会計業務改善委員会及び外部有識者から構成される警察庁会計業務検討会議を開催して、行政事業レビュー、調達改善の取組等を通じ、会計業務の改善に努めている。

(3)良好な治安の確保のための政府を挙げた対策と警察の取組

良好な治安を確保し、国民の生命等を守ることは、国の基本的な責務であって政府の最も優先すべき取組の一つであり、様々な社会・経済活動の前提である。こうした認識の下、政府では、平成25年(2013年)に「「世界一安全な日本」創造戦略」を策定するなど、政府一体となって治安改善のための取組を推進してきた。その結果、我が国の治安は一定の改善がみられる一方で、近年における社会の変化に伴い、様々な治安課題が生じている。こうした課題に的確に対処し、犯罪対策を着実に推進すべく、令和4年12月、「「世界一安全な日本」創造戦略2022」が、第35回犯罪対策閣僚会議において決定されるとともに、閣議決定された。

この戦略は、今後5年間を視野に、各種課題に的確に対処し、国民の治安に対する更なる信頼感を醸成し、我が国を世界一安全で安心な国とすることを目標としている。警察では、関係機関・団体と緊密に連携して、この戦略に基づく取組を推進していくこととしている。

MEMO 警戒の空白を生じさせないための組織運営

サイバー空間や先端技術の利用の拡大、人口構造の変化等、我が国の社会情勢が大きく変化し、また、我が国を取り巻く国際的な情勢も目まぐるしく変化する中、警察は、こうした変化が国内の治安情勢に与える影響を見極め、直面する治安課題に的確に対処していく必要がある。

そのためには、日々の組織運営に当たり、安易な前例踏襲や部門間の縦割り等を排するとともに、少子化に伴う就職適齢人口の減少、地方の過疎化と都市部への人口集中、人々の働き方の変化等を踏まえつつ、有限である警察組織内部のリソースを一層効果的に活用するための取組を推進する必要がある。

こうした認識の下、令和5年7月、警察庁において、①部門を超えたリソースの重点化等、②能率的でメリハリのある組織運営、③先端技術の活用等による警察活動の更なる高度化、④働きやすい職場環境の形成等を柱とする「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」を策定するとともに、同指針に基づき、「警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点」を取りまとめた。

 
警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点

この「指針」と「重点」に基づき、警察庁において、法律改正(注1)を含む各種の制度改正や第一線の業務の在り方に関する基準の見直し等を実施するとともに、都道府県警察において、令和6年4月までに、サイバー空間における対処能力の強化、匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りの強化、要人に対する警護等の強化等の「人的リソースの重点化等により体制を抜本的に強化して推進すべき事項」に関して総勢2,700人以上の体制の増強を行い、各種対策を強化している。このほか、令和6年能登半島地震の発生やSNS型投資・ロマンス詐欺の急増等、その時々の情勢の変化に的確に対応するための部門横断的な取組(注2)を推進している。

警察では、引き続き、国内外の諸情勢が変化する中において、治安事象への対応に警戒の空白が生じることのないよう、情勢の変化と組織の現状を俯瞰的に分析し、警察組織全体の最適化を図るためのリソースの再配分を含めた総合的な対策を強力に推進することにより、国民の期待と信頼に応える警察運営を図っていくこととしている。

注1:銃砲による凶悪事件を踏まえた規制の強化と警察の取組については26頁(トピックスI)を、良好な自転車交通秩序を実現させるための取組については28頁(トピックスII)を、それぞれ参照

注2:令和6年能登半島地震への対応については34頁(トピックスV)を、SNS型投資・ロマンス詐欺対策については5頁(特集)を、それぞれ参照



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