第6章 公安の維持と災害対策

警察活動の最前線

側衛白バイ隊員として護衛に従事して


皇宮警察本部護衛部護衛第一課機動護衛担当

相良 慎之介

 
皇宮警察本部紋章

令和5年10月、天皇皇后両陛下の鹿児島県行幸啓に伴い、私は、鹿児島県警察に特別派遣され、側衛白バイ隊員として護衛に従事しました。

側衛白バイは、天皇皇后両陛下が御乗車される御料車の直近を走行し、その周囲の警戒に当たるという重要な任務を担っています。

沿道は、天皇皇后両陛下のお姿を一目見たいという多くの歓送迎者であふれ、温かいムードが感じられました。

一方で、交通規制を実施している中でも、自動車お列に接近する車両や、沿道から飛び出さんばかりに興奮している歓送迎者もみられ、車列の白バイ隊員は、訓練で培ったフォーメーションを臨機応変にとりつつ、常に感覚を研ぎ澄ませて不測の事態に備えました。

「対向車線に右折車両」

御順路上において、対向車線から右折し、自動車お列に接近しようとする一般車両を発見した瞬間、私の右手はアクセルを開き、白バイを加速させていました。結果として、この車両に対しては、的確に交通規制を行い、お列は無事通過しました。

お列の警衛では、瞬時の判断と対応が求められるため、常に緊張を強いられますが、我々は本警衛の実施に向け、鹿児島県警察との合同訓練を重ねることによって不測の事態における対処能力の向上を図り、自信を持って当日に臨みました。

我々は、最後の砦として、今後も警衛を実施する都道府県警察と連携し、皇室と国民をお護りします。

 
皇宮警察本部護衛部護衛第一課機動護衛担当 相良 慎之介

諦めない


北海道警察本部警備部航空隊特務第一係

工藤 開陽

 
ほくとくん

令和5年3月、「雪崩に巻き込まれた」との110番通報を受け、私たち航空隊は、救難ヘリで出動しました。通報は、北海道日高山脈で単独登山中に野営のための拠点を構築していたところ、突如の崩落によって生き埋めとなってしまったという、大学生からのものでした。

私たちがヘリから降下した地点は、標高1,900メートルの峻険な尾根上で、気温は摂氏零度をはるかに下回り、また、周辺には雪崩の痕跡が点在するなどしていたため、捜索は予想以上に難航しました。大学生からの「ヘリの音が聞こえる」という通話も途絶え、刻々と日没が差し迫る中、捜索延期という言葉も脳裏をよぎりました。しかし、近くにいることを信じて諦めずに捜索を続けた結果、崩落した雪洞に上半身まで雪に埋もれている大学生を発見し、ホイスト救助装置により救出することができたのです。

大学生は、極度の低体温症により意識レベルが低下しており、早期発見と迅速な救護措置がなければ、生還は厳しかったかもしれないと思います。

2か月後、回復した大学生が航空隊を訪れました。一度は失いかけた将来への夢を語るその姿に、私は、今までの努力が報われたような気がしました。これまで、様々な現場で助けられなかった命もあり、悔しい思いをしたこともありましたが、航空隊において救出救助活動等を専門に行う特務係の一員として、これからも「諦めない」ことを信念に救助に当たっていきたいと思います。

 
北海道警察本部警備部航空隊特務第一係 工藤 開陽


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