3 右翼等の動向と対策
(1)右翼の動向と対策
右翼は、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。
令和5年中、中国をめぐっては、尖閣諸島周辺での中国海警局に所属する船舶の動向やALPS処理水放出に対する反応を捉えた抗議行動を行った。ロシアをめぐっては、ウクライナ侵略や北方領土問題を捉えた抗議行動を行った。北朝鮮をめぐっては、弾道ミサイルが繰り返し発射されたことや拉致問題を捉え、韓国をめぐっては、竹島問題、慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題を捉え、それぞれ抗議行動を行った。
右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-7のとおりである。

右翼の街頭宣伝活動(3月、東京)

警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、令和5年中、右翼運動に伴う事件(注)の検挙件数は56件、検挙人員は76人であった。
右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなどもあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしている。このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は44件、検挙人員は50人であった。
また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、令和5年中は、暴力行為等処罰法違反等で8件13人を検挙した。
さらに、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めたが、令和5年中、拳銃の押収はなかった。
注:右翼が街頭宣伝活動、抗議行動等を行う過程で引き起こした事件

右翼の街頭宣伝活動(8月、東京)

街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、東京)
CASE
右翼団体幹部の男(28)は、市民団体主催の集会に対する街頭宣伝車での抗議行動中、愛知県公安委員会が付した許可条件に違反して交差点内に同街頭宣伝車を停滞させたことから、令和5年7月、同男を行進又は集団示威運動に関する条例違反で逮捕した(愛知)。
CASE
右翼団体構成員の男(53)は、令和5年11月、普通乗用自動車を運転し、イスラエル国大使館警備に従事中の警察官に対し、同車両を衝突させる暴行を加えて同警察官の公務の執行を妨害したことから、同男を公務執行妨害罪で現行犯逮捕(同年12月、過失運転致傷罪で起訴)した(警視庁)。
(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応
令和5年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国において約10件のデモが行われた。
また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、デモ等の参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。
警察では、平成28年に施行されたヘイトスピーチ解消法を踏まえ、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為を未然に防止する観点から、引き続き、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。