第3節 公安情勢と諸対策
1 オウム真理教の動向と対策
(1)オウム真理教の動向
オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する「Aleph(アレフ)」をはじめとする主流派と、松本の影響力がないかのように装う「ひかりの輪」を名のる上祐派が活動している。教団は、松本が確立した教義に基づいて、松本サリン事件、地下鉄サリン事件等の数々の凶悪事件を引き起こし、多くの犠牲者を出した。
このため、平成12年(2000年)2月以降、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法に基づき、教団に対し、公安調査庁長官の観察に付する処分が行われている。令和6年(2024年)1月には、教団の危険性が改めて認定され、8回目となる処分の期間更新決定(令和9年1月末まで)がなされた。この観察処分に基づき、教団は3か月ごとに公安調査庁長官に対し活動実態を報告することを義務付けられているが、かねてから一部不報告があったことに加え、令和2年2月の報告以降、「Aleph(アレフ)」は収益事業に関する事項等、報告すべき事項の一部についても報告を行わず、公安調査庁による是正指導にも応じなかったため、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難になっているとして、公安調査庁長官からの請求を受け、公安審査委員会は令和5年3月、「Aleph(アレフ)」に対し、施設の全部又は一部の使用や、財産上の利益の贈与を受けることを6か月間禁止する再発防止処分を決定した。しかし、以降も一部不報告が続いたことから、同委員会は、同年9月に2回目、令和6年3月に3回目の処分を行う決定をした。
教団は、依然として松本及び松本の説く教義を基盤としており、インターネットを活用するなどして勧誘等の活動を継続している。
(2)オウム真理教対策の推進
警察では、こうした教団が無差別大量殺人行為を再び起こすことがないよう、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進している。
教団は、15都道府県に30か所の拠点施設を有しているが、拠点施設が所在する地域においては、教団の活動に対する不安感が強く、住民が対策組織を結成している地域もある。警察では、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺における警戒警備活動を行うとともに、教団の現状や警察の取組について、地域住民や地方公共団体に向けた広報活動を行うことにより、安心感の醸成を図っている。また、教団は、一連の凶悪事件を知らない若い世代を主な対象として、教団名を隠した勧誘活動を行っていることから、警察では、巧妙な勧誘活動の手口について、様々な機会を通じ、学校等に対して広報している。
