特集 複雑化する社会に適応する警察組織と多彩な人材

第3節 今後の展望

警察は、変容し続ける日本社会と、それに伴い新たに生じ、又は変化する治安上の課題に適切に対応していく必要がある。

第1節で触れた人口減少・少子高齢化は、日本社会が今後も直面する構造的社会課題である。我が国の人口は、平成27年(2015年)国勢調査において初めて減少に転じ、令和2年(2020年)国勢調査においても、引き続き減少した。また、同年の国勢調査における総人口に占める15歳未満人口の割合は11.9%、65歳以上人口の割合は28.6%であり、15歳未満人口の割合は世界で最も低い水準、65歳以上人口の割合は世界で最も高い水準となっている(注1)。人口減少・少子高齢化は、治安情勢への影響のみならず、就職適齢人口の減少等にもつながるため、警察においても、マンパワーの維持・向上が大きな課題となる。

こうした課題に対処するためには、第2節で述べたとおり、有能で意欲のある人材を確保するとともに、全ての職員がその能力を最大限に発揮することができる職場環境を整備することが不可欠であるほか、有限である人材が、治安の確保や国民の不安の払しょくのために真に求められるところで力を発揮することができるよう、警察運営の合理化・効率化を図ることや、リソースの配分の最適化を図ることも極めて重要である。

また、第1節において強調した情報通信技術をはじめとする科学技術の進展とそれによる社会の変容も、将来にわたり不可逆的に進行することが想定される。

我が国の治安の担い手たる警察は、これらの社会情勢の構造的な変容を引き続き注視し、構造的な変容が治安課題に与える影響を見極め、適時的確に対処しなければならない。

これまでも、警察では、第2節で述べたとおり、様々な治安課題に対応するため、人材の確保・育成や体制の整備等、必要な取組を全国において進めてきたところであるが、今日、サイバー空間や先端技術の利用の拡大をはじめ、社会の諸情勢がめまぐるしく変化している中、例えば、サイバー空間における対処能力の向上に資する人材の確保・育成や、近年急速に進展しているAI(人工知能)(注2)も含めた先端技術の活用等による警察活動の高度化も一層進めていかなければならない。

こうした認識の下、警察では、情勢の変化と組織の現状を俯瞰(ふかん)的に分析し、警察組織全体の最適化を図るための総合的な対策を、これまで以上に強力に推進していくこととしている。

様々な能力や知見を有する人材は、警察が社会の急速な変容に対応し、複雑化する治安上の課題に的確に対処するための原動力である。警察では、今後も変容していくことが見込まれる課題に対処し、国民の期待と信頼に応えることができる警察組織を構築するため、引き続き、多彩な人材の確保と活用に取り組んでいく。

注1:令和2年国勢調査人口等基本集計(総務省)(https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/outline_01.pdf
QRコード 令和2年国勢調査_総務省

注2:特に高度な対話型生成AIは、情報のアクセシビリティの向上、労働力不足解消から生産性向上まで、諸問題を解消する処方となるのではないかとの期待もかけられている。



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