第2節 多彩な人材が活躍する有機的な警察組織の構築
社会情勢の変容に伴い、複雑化する治安課題に対し、警察が的確に対処するためには、多彩な能力や豊富な知見を有する人材を確保・育成するとともに、こうした人材が活躍することができる環境の整備を行うことが必要である。警察では、多彩な人材が相互に力を合わせて迅速かつ的確に課題に取り組むことができる、先見性、発想力と創造性を持った有機的な警察組織の構築に向けた取組を進めている。
1 社会の急速な変容に適応する組織文化の醸成
警察では、「「世界一安全な日本」創造戦略2022」(令和4年12月閣議決定)(注)等に基づき、女性の採用・登用や、サイバー空間の脅威に対処するための人材を含む優秀な人材の確保等により警察の人的体制を強化するほか、警察職員の力を十分に発揮させるため、働きやすい職場環境の整備、災害や事故等の対応に従事する警察職員のメンタルヘルス対策の推進等に取り組んでいる。また、将来に向けて社会の変化に適応していくため、部門や職種にとらわれない若手職員を中心とした検討体制を設けるなど、多様な意見を踏まえながら組織運営の在り方について不断の検討を進めている。
CASE
未来の徳島県警察を創造するプロジェクトチーム(徳島県警察)
徳島県警察では、県警察の抱える重要課題やその他諸課題の検討に将来を担う若手職員の視点をより一層反映させるため、「未来の徳島県警察を創造するプロジェクトチーム」を平成26年度に発足した。
本チームは、部門や性別のバランスを考慮した上で、各部門を代表する若手職員で編成されたメンバーにより、組織体制の在り方や各部門・警察署における課題等について、徳島県知事との意見交換会のほか、複数回にわたる検討会を開催し、その検討結果を県警察の組織運営に反映させている。
本チームによる検討の結果、県警察における人材確保の観点から、「サイバー関連知識や心理師資格等、警察業務に活用可能な資格を有する人材について、新たな採用制度を新設してはどうか」などの提案を行い、サイバー捜査官の選考採用枠の拡充、公認心理師の選考採用枠の新設等を実施したほか、人材登用の観点から、「刑事部門に登用されるためには警察官として4年以上の経験が必要などとする経験年数等の登用基準が結婚、出産等の個人のライフサイクルと重なるため、希望するポストを諦めるなどの弊害が生じている」などの問題提起を行い、経験年数の短縮等、人材登用の基準の見直しを行うなど、県警察における人的・組織的な基盤の強化の取組に若手職員の視点を反映させている。
そのほか、女性警察官の増加や働き方改革への対応等のため、本チームから提出された意見を参考に、これまでに、時差出勤制度の創設やテレワーク、サテライトオフィスにおける勤務のほか、女性職員に配意した施設整備等の施策を展開している。

プロジェクトチームの検討風景
CASE
警察業務の近未来創造ワークショップ(鹿児島県警察)
「警察業務の近未来創造ワークショップ」とは、少子高齢化や科学技術の発展等により社会が大きく変容する中、鹿児島県警察が解決すべき課題を効果的に解決することができる科学技術を選定し、こうした技術の導入によりどのように課題を解決することができるのかについて検討する取組である。検討テーマとなる技術は、遠い未来の夢物語ではなく、近い将来に実用化されることが見込まれるものを選定し、予算面の課題は度外視して、導入により革新的に警察力が向上する技術を優先して検討することとした。
また、本ワークショップは、警察官、事務職員、情報通信部職員、県庁への出向者と、様々な部門の若手職員を軸に編成し、部門横断的な視点を持ち、柔軟にアイデアを創出しやすい環境を構築した。
このワークショップを通じて、生体認証とIC管理タグを活用した入退出ゲートや、有人離島において無人で開設可能なデジタル交番等、まさに警察官と事務職員、技術職員による混成チームだからこそ提案可能なアイデアを議論することができ、通常の警察業務では経験しがたいクリエイティブな感覚を養う、非常に貴重な経験となった。
導入例がない先端技術の導入には、予算面の課題や情報セキュリティ上の課題等から、関係各所の合意や長期間の調整を要することが多いが、このようなワークショップの活動により、これらを効率的かつ合理的に推進することができている。

「デジタル交番」のイメージ