第3節 国際的な警察活動
(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携
① ASEAN加盟国、G7各国等との連携
警察では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野において、外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。
令和4年(2022年)9月には、第12回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注1)及び第7回日・ASEAN国際犯罪閣僚会議が開催され、国際テロを含む国際犯罪への対策について議論した。また、同年11月には、ドイツにおいて、G7内務・安全担当大臣会合が開催され、我が国からは警察庁次長が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策等について議論した。
また、同年3月には、「ロシアの支配層(「エリート」)、代理勢力、オリガルヒに対するタスクフォース」(注2)に係るG7等関係閣僚級会合に国家公安委員会委員長が出席し、ロシアによるウクライナ侵略に関し、対露経済制裁措置の実行性確保について議論した。
注1:ASEAN(Association of Southeast Asian Nations:東南アジア諸国連合)加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議
注2:ロシアによるウクライナ侵略に伴い各国が発動した対露経済制裁措置の実効性を確保するため、2022年2月にアメリカ合衆国政府が立ち上げを宣言したタスクフォース。我が国をはじめとしたG7及び豪州の財務・金融、司法・治安当局により構成

ASEAN+3国際犯罪閣僚会議の様子

G7内務・安全担当大臣会合の様子
② 二国間等の連携
警察では、テロや組織犯罪等の国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関等との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。令和4年10月には、国家公安委員会と韓国国家警察委員会が交流し、両国の警察制度について意見交換を行った。また、同年11月には、東京において、4年ぶりとなる第5回日中韓警察局長級会議を開催し、日中韓警察間の共通の課題について議論した。
また、令和5年(2023年)1月には、警察庁長官がカンボジア国家警察副長官の表敬訪問を受けるなど、治安分野における外国政府・機関との関係深化を図ったほか、同年3月にはベトナム・ハノイにおいて、ベトナム公安省との間で第7回日越治安当局次官級協議を開催した。

カンボジア国家警察副長官の表敬訪問の様子
(2)治安に関係する国際約束の締結
刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期すとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU、ロシア及びベトナムとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。
(3)国際協力の推進
① 海外の警察に対する支援
警察庁では、我が国の警察の知見や特性を生かすことができる国及び分野において、外務省やJICAと協力し、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた海外の警察に対する支援を行っている。
ア インドネシア国家警察改革支援プログラム
平成13年(2001年)以降、「インドネシア国家警察改革支援プログラム」を実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。平成24年10月から令和4年9月にかけて、「市民警察活動(注)」を全国展開させるため、交番制度の普及、現場鑑識活動等に関し協力・支援を行ってきた。また、令和4年10月からは、これまで培ってきた「市民警察活動」を更に発展させ、犯罪抑止対策に関する新たな支援を開始し、専門家として3人の我が国警察官が現地で活動している(令和5年4月末現在)。
注:地域住民との対話や地域社会との協働を通じ、市民の信頼を得ながら民主的に行う警察活動
MEMO インドネシア国家警察の若手幹部候補生に対する研修の再開
令和4年9月20日から同年10月21日にかけて、インドネシア国家警察の若手幹部候補生12人を受け入れ、茨城県警察における交番研修、警察学校や通信指令室等の視察、警察大学校国際警察センターにおける刑事手続等の講義や実戦的初動指揮訓練等を行った。本研修は、新型コロナウイルス感染症の影響による2年間の中止を経て3年ぶりに実施されたものであり、我が国の警察に対する理解を一層促進することとなった。

茨城県警察での研修の様子
イ 研修員の受入れ
警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。令和4年中は、6課目の研修を実施し、アジア、アフリカ、中南米等の各国から、警察幹部を含む59人の研修員を受け入れた。
MEMO 警察による国際緊急援助活動
我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年(1987年)以降、延べ313人の隊員を延べ17の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。例えば、令和5年(2023年)2月にトルコ南東部で発生したマグニチュード7.8の地震に際して派遣された国際緊急援助隊・救助チームには、警察職員23人及び警備犬4頭が参加し、建物倒壊現場での被災者の捜索・救助活動に従事した。

トルコでの捜索・救助活動の様子(写真提供/JICA)
(4)国際的な警察活動に関する基盤整備
警察では、警察大学校国際警察センターにおいて、言語別の語学研修や国際捜査、国際協力に関する研修の実施等により、通訳人となる警察職員や国際捜査、国際協力に知見を有する警察職員を育成しているほか、各都道府県警察においても、民間の通訳人の確保や世界各国・地域の文化・宗教、外国人等に係る各種制度等に関する理解を促進するための研修に積極的に取り組むなどして、国際的な警察活動に関する基盤整備を推進している。