第5項　大衆運動への警察の対応

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講じるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講じることとしている。

近年の大衆運動では、平成23年の福島第一原子力発電所事故を契機に、反原発運動が幅広い年齢層の多数の市民が参加する運動へと発展し、また、平成27年には、平和安全法制等に反対する運動に諸団体が連携して取り組む抗議行動が行われるようになった。

こうした中で、毎月19日には、国会議事堂周辺において、諸団体が連携してその時々の政治課題を捉えた抗議行動が、また、毎週金曜日には、全国各地において、反原発を訴える抗議行動が、それぞれ継続して行われている。

さらに、令和4年中は、3月以降、各地でロシアによるウクライナ侵略を批判する運動が行われ、この中で憲法改正に反対する主張もみられたほか、9月には、国会議事堂周辺等において、故安倍晋三国葬儀の実施を捉えた抗議行動が行われた。

憲法改正に対する抗議行動（共同通信社）

沖縄県では、普天間飛行場の危険の除去と返還に向けて名護市辺野古への移設工事が進められているが、これに反対する諸団体等は、移設先であるキャンプ・シュワブや埋立用の資材を搬出する港の周辺等において、工事関係車両への立ち塞がり、道路での座込みといった危険な妨害活動を繰り返している。

警察では、令和4年中、同県内のこうした反基地運動に伴い、公務執行妨害罪等で4件、2人を検挙した。

移設工事に対する抗議行動（時事通信社）

近年、環境保護や反貧困等といった様々なテーマを掲げ、国際会議等に対する抗議行動が国際的に展開されている。

令和5年に開催されたG7広島サミットにおいては、広島市内で反戦、反核等を主張して同サミットに対する抗議行動が行われ、このうち一部には、海外の活動家が参加するなど、国際的な連携がみられた。

G7広島サミットを捉えた抗議行動（5月、広島）