3 右翼等の動向と対策
(1)右翼の動向と対策
右翼は、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。
令和4年中、ロシアをめぐっては、ウクライナ侵略や北方領土問題を捉えた抗議行動を行った。中国をめぐっては、北京2022冬季オリンピック・パラリンピックや中国の弾道ミサイルが我が国の排他的経済水域内に落下したことを捉えた抗議行動を行った。北朝鮮をめぐっては、弾道ミサイルが繰り返し発射されたことや拉致問題を捉え、韓国をめぐっては、竹島問題、慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題を捉え、それぞれ抗議行動を行った。
右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-7のとおりである。

右翼の街頭宣伝活動(5月、東京)

CASE
右翼団体代表の男(58)は、市民団体主催の集会に対する街頭宣伝車での抗議行動中、愛知県公安委員会が付した許可条件に違反して、交差点内に同街頭宣伝車を停滞させたことから、令和4年7月、同男を行進又は集団示威運動に関する条例違反で逮捕した(愛知)。
警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、令和4年中、右翼運動に伴う事件(注)の検挙件数は41件、検挙人員は58人であった。
右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなどもあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしている。このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は67件、検挙人員は78人であった。
また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、令和4年中は、威力業務妨害罪等で13件19人を検挙した。
さらに、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めたが、令和4年中、拳銃の押収はなかった(前年中は1丁)。
注:右翼が街頭宣伝活動、抗議行動等を行う過程で引き起こした事件

街頭宣伝活動に対する取締り状況(2月、東京)
CASE
右翼団体代表の男(59)ら4人は、資金獲得目的で、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した個人事業者等を装い、インターネットを介して虚偽の内容を中小企業庁に申請して持続化給付金の名目で現金をだまし取ったことから、令和4年6月、同男らを詐欺罪で逮捕した(警視庁)。
CASE
右翼団体代表の男(52)は、特定の会社の周辺で街頭宣伝車に装備された拡声機を用いて「悪意に満ちた会社を糾弾する」などと街頭宣伝活動を行い、その状況を撮影して動画共有サイトに投稿するなどして同会社らの名誉を毀損したことから、令和4年2月、同男を名誉毀損罪で逮捕した(大阪)。
(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応
令和4年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国において約20件のデモが行われた。
また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。
警察では、平成28年に施行されたヘイトスピーチ解消法を踏まえ、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為を未然に防止する観点から、引き続き、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

右派系市民グループのデモ(2月、東京)