第4章 組織犯罪対策

4 国際連携

国境を越えて行われるマネー・ローンダリングやテロ資金供与を防止するためには、各国が連携して対策を講ずることが不可欠である。このため、国際社会においては、FATF(注1)、APG(注2)、エグモント・グループ等の枠組みの下、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策の国際的基準の策定、普及等が行われており、警察庁もこれらの活動に積極的に参画している。

注1:Financial Action Task Force(金融活動作業部会)の略

注2:Asia/Pacific Group on Money Laundering(アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ)の略

(1)FATFの活動と警察庁の参画状況

FATFは、マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策及び拡散金融(注1)対策に関する国際協力を推進するため設置されている政府間会合であり、令和4年末現在、我が国を含む37の国・地域及び2の国際機関が参加している。警察庁では、全体会合等に参加し、マネー・ローンダリング対策等のための新たな枠組みづくりに向けた議論を行っている。

FATFは、各国が法執行、刑事司法及び金融規制の各分野において講ずるべき措置を、「FATF勧告」として示すとともに、参加国における勧告の遵守の徹底のため、順次、各国に審査団を派遣して相互審査を実施している。これまで我が国に対しても過去に4回にわたって審査が実施されており、令和3年6月の全体会合では、4回目の審査についての審査結果報告書の討議・採択が実施された。同報告書において、金融機関等に対する監督やマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の捜査・訴追等に優先的に取り組むべきであるとされたことを踏まえ、令和4年5月には、政府において「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」が決定されたほか、同年12月には、犯罪収益移転防止法を含む関係法律の改正(注2)がなされた。

注1:大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与

注2:国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第97号)

(2)APGの活動と警察庁の参画状況

APGは、アジア・太平洋地域のFATF非参加国・地域におけるマネー・ローンダリング対策等の強化・促進をするために設置された機関であり、マネー・ローンダリング対策等に取り組む国・地域に対する支援等を行っている。令和4年末現在、我が国を含む41の国・地域が参加している。警察庁では、年次会合に参加し、最新のマネー・ローンダリングの手口・傾向等についての議論を行っている。

(3)エグモント・グループの活動と警察庁の参画状況

エグモント・グループは、各国のFIU間の情報交換、研修、専門知識に関する協力等を目的として設置された機関であり、令和4年末現在、我が国を含む166の国・地域のFIUが参加している。警察庁では、年次会合及び作業部会にそれぞれ参加し、FIU間の情報交換に係る行動規範等に関する議論を行っている。

(4)外国のFIUとの情報交換

国境を越えて行われるマネー・ローンダリングやテロ資金供与を発見するためには、各国のFIUが保有する情報の積極的な交換が必要であることから、国家公安委員会では、外国のFIUとの連携を強化し、活発な情報交換を実施している。また、令和4年末現在、110の国・地域のFIUとの間で情報交換のための枠組みを設定している。



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