第4章 組織犯罪対策

警察活動の最前線

被害額1日1億円の黒幕


警視庁刑事部捜査第二課特別捜査第16係

小山 孝康

 
ピーポくん

特殊詐欺の被害額は1日約1億円といわれています。これらの被害額の大部分は受け子や出し子から上位被疑者の手に渡り、その背後にいる暴力団等に渡っているとみられます。

アジト摘発をはじめ、受け子・出し子の検挙や様々な情報を端緒とし、陰で暗躍する上位被疑者への突き上げ捜査を推進していますが、末端のメンバーは、報復をおそれて上位被疑者に関する供述を拒む傾向があり、なかなか黒幕までたどりつかないのが実情です。

こうしたケースを踏まえ、警視庁では所属部署を横断した特殊詐欺対策プロジェクトを発足してあらゆる情報を共有しながら捜査を進め、暴力団事務所への捜索差押えや被疑者間の連絡状況の精査等により上位被疑者の検挙につなげています。

また、民事介入暴力を取り扱う弁護士との連携を強化して、暴力団の代表者等に対する損害賠償請求訴訟を支援しており、こうした取組は、被害者の経済的被害を回復するとともに、暴力団の活動資金を剥奪することができるものでもあり、暴力団の弱体化につながっています。

2000年代初めに特殊詐欺が認知されて以降、深刻な社会問題となって久しい今日、詐欺組織は海外に拠点を構えるなど、その手口を巧妙化させていますが、私は「詐欺組織を壊滅させることができるのは我々しかいない」との気概を持ち、これからも特殊詐欺の検挙と抑止に邁進していきます。

 
警視庁刑事部捜査第二課特別捜査第16係 小山 孝康

「逃げ得」は許さない!!~国外逃亡被疑者を追い詰めての検挙~


大阪府警察本部刑事部国際捜査課国際捜査共助第一係

谷岡 知代子

 
フーくん・ケイちゃん

私は国際捜査共助を担当しています。

当係では、警察庁を通じて、外国捜査機関等に対し、被疑者の所在確認等の捜査共助・協力の要請を行ったり、被疑者が国外逃亡するおそれがある場合には、国際海空港等からの出国を未然に防ぐための手配を実施したりしています。また、被疑者が国外に逃亡中であれば、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、その所在が確認された場合、被疑者の引渡しに向けた調整を行います。

最近においては、SNSを通じて恋愛感情を抱かせた上で金銭を振り込ませる手口による国際的な詐欺事件を捜査中、首魁(かい)である日本人の被疑者がアフリカのガーナ共和国に潜伏していることが判明したことから、被疑者検挙に向け、国際手配や旅券返納命令の手続を行いました。ガーナ捜査当局に対しては、被疑者に関する情報提供や所在確認依頼、身柄拘束の要請等、あらゆる手段を講じました。その結果、令和4年8月、被疑者が日本に退去強制されることとなり、関西国際空港で逮捕することができたのです。この様子は、報道でも大きく取り上げられたほか、同年9月には、ICPOの幹部が大阪府警察本部に来訪して同事件について情報共有を行ったり、同年11月には、シンガポールで開催されたICPO主催の国際会議において、我が国警察から本件についての事例発表をしたりするなど、大きな反響があった事件検挙となりました。

たとえ被疑者が国外に逃亡していても、決して「逃げ得」は許さないという強い気持ちで、国際捜査共助業務に邁進していきたいと思います。

 
大阪府警察本部刑事部国際捜査課国際捜査共助第一係 谷岡 知代子


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