警察活動の最前線
安全・安心なサイバー空間の実現を目指して
前 沖縄県警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課サイバー犯罪特捜係(現 沖縄県警察本部警務部監察課監察第一係)
仲眞 克美

サイバー犯罪は、年々その手口を深刻化・巧妙化させています。その一つとして、インターネットバンキングに係る不正送金が挙げられます。
私が捜査に携わった事案では、不正に入手した利用者のID・パスワードを用いた不正送金が全国17都府県で発生し、現金の引き出し場所が沖縄県内だけでも100か所以上に及ぶとともに、被害額も多額に上っていることが確認できました。
そこで、9県警察による合同捜査体制を構築し、各県連携した一斉捜査を行うことで、指示役を含む多数の上位被疑者を逮捕するに至りました。
その後、約3年半に及ぶ捜査により、指定暴力団組員を含む数十名を検挙するとともに、徹底したスマートフォンのデータ解析、IPアドレスの差押え、解析等を重ね、海外で不正アクセスを敢行しているグループや本件の首魁等犯罪グループの実態を解明しました。
私は沖縄県警察の捜査員の一人にすぎませんが、今回の9県警察による合同捜査で得た貴重な経験を生かし、県境も国境も関係なく発生するサイバー空間における犯罪に敢然と立ち向かっていきたいと思います。

サイバー事案の予兆を見逃すな!
警察庁サイバー警察局情報技術解析課情勢把握第二係
後藤 隆文

私が所属しているサイバーフォースセンターでは、サイバー空間の安全・安心の確保に向けて、インターネット上に設置したセンサーで検知した情報から、インターネット上で発生している脅威を分析しています。このような脅威の中には、日本の重要インフラ事業者等に対するサイバー攻撃やその予兆となるものが含まれていることがあることから、収集した情報の高度な分析により、サイバー事案の予兆の把握に努めています。
企業などで使われるネットワーク機器やシステム等のぜい弱性は日々出現しており、サイバー事案に悪用される手法も常に変化しています。サイバー事案の実態を把握するには、警察庁で設置しているセンサーだけでなく、インターネット上に公開されているあらゆる情報源からデータを収集・分析する必要があります。私は、このようなサイバー事案に関係する情報をインターネット上から自動で収集するプログラムを作成し、分析業務の効率化に役立てています。
あらゆるモノがインターネットにつながる昨今、サイバー空間における攻撃者の目的や手法は変化し続けており、新たな情報の収集や分析が欠かせません。これからも、自分自身の知識や技能を常にアップデートしながら、分析技術の向上、高度化にもまい進していきます。
