5 官民連携の推進
(1)日本サイバー犯罪対策センターとの連携
我が国における産学官連携の枠組みとして平成26年から業務が開始されたJC3(注)では、産学官の情報や知見の集約・分析をし、その結果等を還元することで、脅威の大本を特定し、これを軽減し、又は無効化することにより、以後の事案発生の防止を図ることとしている。警察では、捜査関連情報等をJC3において共有し、産学におけるサイバーセキュリティに関する取組に貢献するとともに、JC3において共有された情報を警察活動に迅速・的確に活用し、安全で安心なサイバー空間の構築に努めている。
注:108頁参照

(2)サイバー防犯ボランティアに対する支援
サイバーパトロールにより発見した違法情報・有害情報をIHC、サイト管理者等に通報する取組やインターネット利用者に対する講演活動等を行うサイバー防犯ボランティアは、全国で281団体、6,824人(令和4年12月末現在)となっており、警察では、研修会を開催するなどして、こうした活動を行う団体の拡大と取組の活性化を図っている。

サイバー防犯ボランティアの活動の様子
CASE
警察庁では、令和5年2月から3月にかけて、サイバー防犯ボランティアを対象とした広報啓発コンテストを実施した。サイバー防犯ボランティアから、「フィッシング対策」又は「ランサムウェア対策」をテーマとした広報動画を募集し、警察庁Twitterへの掲載等により審査を行い、テーマごとに、最優秀作品にはサイバー警察局長賞を、次点の優秀作品にはサイバー審議官賞を、それぞれ授与した(注)。
注:警察庁ウェブサイト「サイバー防犯ボランティア広報啓発コンテストの実施結果について」(https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/koho/news/csvolunteer_contest.html)

サイバー防犯ボランティア広報啓発コンテスト最優秀作品
(3)サイバーテロ対策協議会
警察では、各都道府県警察及びサイバー事案の標的となるおそれのある重要インフラ事業者等で構成される「サイバーテロ対策協議会」を全ての都道府県において設置し、サイバー事案の脅威やサイバーセキュリティに関する情報提供、民間の有識者による講演及び参加事業者間の意見交換・情報共有を行っているほか、サイバー事案の発生を想定した共同対処訓練等を行っている。

サイバーテロ対策協議会
(4)サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク
警察では、情報窃取の標的となるおそれの高い先端技術を有する事業者等との間で、情報窃取を企図したとみられるサイバー事案に関する情報共有を行う「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」を構築しており、このネットワークを通じて事業者等から提供された情報を集約するとともに、これらの事業者等から提供された情報及びその他の情報を総合的に分析し、事業者等に対し、分析結果に基づく注意喚起を行っている。
(5)不正プログラム対策協議会
警察では、警察庁及びウイルス対策ソフト提供事業者等で構成される「不正プログラム対策協議会」において、不正プログラム対策に関する情報共有を行っている。特に、警察からは、市販のウイルス対策ソフトで検知することができない新たな不正プログラムに関する情報をはじめとする不正プログラム対策に資する情報を提供し、サイバーセキュリティ対策の向上を図っている。
(6)不正通信防止協議会
警察では、警察庁及びセキュリティ監視サービス又はセキュリティ事案に対処するサービスを提供する事業者で構成される「サイバーインテリジェンス対策のための不正通信防止協議会」において、標的型メール攻撃等に利用される不正プログラムの接続先等の情報を共有することにより、我が国の事業者等が不正な接続先へ通信を行うことを防止している。
(7)高度な研究開発等を行う大学を標的としたサイバー事案への対策の推進
近年、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案が発生していることから、警察では、当該サイバー事案に関する情報収集・分析を強化するとともに、大学と連携し、サイバー事案をめぐる最新の情勢や被害防止対策等に関する情報共有及びサイバー事案の発生を想定した共同対処訓練を実施することなどにより、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案への対処能力の強化を図っている。
(8)事後追跡可能性の確保に向けた取組の推進
警察では、捜査における犯人の事後追跡可能性を確保するため、関係事業者等に対し、総務省の「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」を踏まえた通信履歴の適切な保存、適切な本人確認・認証等の実施を要請している。
また、近年、MVNO(注1)が本人確認をせずに契約したSMS機能付きデータ通信専用SIMカードがサイバー事案等に悪用された事例が確認されていることなどを踏まえ、都道府県警察では、SMS認証の代行に伴う違法行為(注2)の取締りを強化しているほか、警察庁では、総務省と連携して、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会に対し、SMS機能付きデータ通信契約時の本人確認の実施について働き掛けを行ってきた。この働き掛けを受けて、令和3年1月、同委員会加盟事業者は、自主的な取組として、SMS機能付きデータ通信契約時の本人確認を実施することを申し合わせた。
注1:Mobile Virtual Network Operatorの略。自ら無線局を開設・運用せずに移動通信サービスを提供する電気通信事業者
注2:通信当事者以外の第三者が、SMS認証に用いる携帯電話番号や当該認証のための認証コードを当該通信当事者に提供する行為