第3章 サイバー空間の安全の確保

4 国際連携の推進

(1)外国捜査機関等との連携の推進

警察庁では、多国間における情報交換や協力関係の確立等に積極的に取り組んでおり、令和4年中は、G7ローマ/リヨン・グループ(注1)に置かれたハイテク犯罪サブグループ、サイバー犯罪条約(注2)の締約国等が参加するサイバー犯罪条約委員会会合、EUROPOL(注3)が主催するサイバー犯罪会議等の国際会議に参加した。また、FBI(注4)が主催する各国の捜査機関職員を対象としたサイバー犯罪対策等に関する研修に我が国の警察職員を派遣するなど、サイバー空間における脅威に関する情報の共有や、国際捜査共助に関する連携強化等を推進している。

さらに、情報技術解析に関する知識・経験等の共有を図るため、ICPO(注5)加盟国の法執行機関に加えて、国外の民間企業や学術機関が参加するICPOデジタル・フォレンジック専門家会合に平成28年から参加しているほか、情報セキュリティ事案に対処する組織の国際的な枠組みであるFIRST(注6)に平成17年から加盟しており、組織間の情報共有を通じ、適切な事案対処に資する技術情報の収集を行っている。

注1:昭和53年(1978年)にボン・サミットを契機に発足したG8テロ専門家会合(G8ローマ・グループ)と平成7年(1995年)にハリファクス・サミットで設置されたG8国際組織犯罪対策上級専門家会合(G8リヨン・グループ)が、平成13年(2001年)の米国における同時多発テロ事件以降合同で開催されているもので、国際組織犯罪対策やテロ対策等について検討している。なお、平成26年(2014年)3月から、G7として実施している。

注2:サイバー犯罪に関する条約。サイバー犯罪から社会を保護することを目的として、コンピュータ・システムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全等に係る刑事手続の整備、犯罪人引渡し等に関する国際協力等につき規定している。平成24年に我が国について発効した。

注3:European Union Agency for Law Enforcement Cooperationを指す。欧州連合(EU)の法執行機関であるが、捜査権限はなく、加盟国間の情報交換の促進や収集した情報の分析等が主な任務である。

注4:Federal Bureau of Investigation(米国連邦捜査局)の略

注5:International Criminal Police Organization(国際刑事警察機構)の略

注6:Forum of Incident Response and Security Teamsの略

MEMO 欧州各国との連携強化の推進

警察庁においては、令和4年6月から、欧州各国の捜査機関との緊密な連携を図るため、サイバー事案対策に専従する連絡担当官をEUROPOLに初めて常駐させ、信頼関係の構築を進めている。

令和4年10月には、サイバー警察局長がEUROPOLにおいて開催された欧州警察長官会議に出席するとともに、フランス、オランダ及びドイツの3か国の捜査機関を訪問し、サイバー犯罪対策部門の長等とサイバー空間をめぐる脅威情勢、ランサムウェア対策、連絡担当官を通じた連携強化等について協議を行った。

 
サイバー警察局長によるEUROPOL訪問
サイバー警察局長によるEUROPOL訪問

(2)国際協力の推進

警察庁では、サイバー空間における脅威への諸外国の対処能力の向上を図るとともに、外国捜査機関等との協力関係を強化することを目的として、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA(注))と連携して外国捜査機関等に対する支援を行っている。平成26年度からは、外国捜査機関等のサイバー犯罪対策等に従事する職員を招へいし、サイバー空間における脅威への対処に関する知識・技術を習得させることなどを目的とした研修を実施しているほか、平成29年度からは、ベトナム公安省の職員を受け入れて、サイバーセキュリティ対策等に関する知識・技術の習得を目的とした研修を行っている。

注:Japan International Cooperation Agencyの略



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