第3章 サイバー空間の安全の確保

第3章 サイバー空間の安全の確保

第1節 サイバー空間における脅威

サイバー空間は、地域や年齢、性別を問わず、全国民が参加し、重要な社会経済活動が営まれる公共空間へと変貌を遂げ、金融、航空、鉄道、医療等といった国民生活や社会経済活動を支える基盤となる機能から、警察や防衛といった治安や安全保障に関わる国家機能に至るまで、あらゆる場面で実空間とサイバー空間の融合が進んでいる。

こうした中、国内において被害が拡大を続けるランサムウェアの感染被害では、サプライチェーン全体の事業活動や地域の医療提供体制に影響を及ぼす事例が確認されるとともに、我が国の暗号資産関連事業者を標的としたサイバー攻撃や、学術関係者・シンクタンク研究員等を標的としたサイバーインテリジェンス(注)が明らかになり、また、フィッシング報告件数が増加する中でインターネットバンキングに係る不正送金被害が一時的に急増するなど、サイバー空間をめぐる脅威は、極めて深刻な情勢が続いている。

注:107頁参照

1 サイバー事案等の検挙状況

(1)サイバー事案(注1)の検挙件数

令和4年(2022年)中(4月から12月まで)(注2)のサイバー事案の検挙件数は、1,844件であった。

注1:108頁参照

注2:法令上の用語としての「サイバー事案」は、令和4年4月1日に施行された警察法の一部を改正する法律による改正後の警察法において新たに定義されたものであることから、同年1月から3月までに検挙されたサイバー事案については計上していない。

(2)不正アクセス禁止法違反

令和4年中の不正アクセス禁止法違反の検挙件数は522件と、前年より93件(21.7%)増加し、検挙人員は257人と、前年より22人(9.4%)増加した。不正アクセス禁止法違反として検挙した不正アクセス行為の類型別内訳をみると、他人の識別符号を無断で入力する「識別符号窃用型」が482件(92.3%)と最多であった。

また、令和4年中の不正アクセス行為の認知件数(注)は2,200件であり、これを不正アクセス行為後の行為別にみると、「インターネットバンキングでの不正送金等」が1,096件(49.8%)と最多であった。

注:不正アクセス被害の届出を受理した場合のほか、余罪として新たな不正アクセス行為の事実を認知した場合、報道を踏まえて事業者等に不正アクセス行為の事実を確認した場合その他関係資料により不正アクセス行為の事実を確認することができた場合において、被疑者が行った犯罪構成要件に該当する行為の数

(3)コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(注)

令和4年中のコンピュータ・電磁的記録対象犯罪の検挙件数は948件と、前年より219件(30.0%)増加した。

注:刑法に規定されているコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪

(4)サイバー犯罪(注)の検挙件数の推移

最近5年間のサイバー犯罪の検挙状況は、図表3-1のとおりである。

サイバー犯罪の検挙件数は増加傾向にあり、令和4年中の検挙件数は1万2,369件と、前年より160件(1.3%)増加し、過去最多を記録した。

注:不正アクセス禁止法違反、コンピュータ・電磁的記録対象犯罪その他犯罪の実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪

 
図表3-1 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成30年(2018年)~令和4年)
図表3-1 サイバー犯罪の検挙件数の推移(平成30年(2018年)~令和4年)
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