第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

警察活動の最前線

警察による犯罪被害者等支援の例


警察では、犯罪被害者等が直面する様々な状況に応じた支援の充実を図っている。その支援について警察署及び警察本部における対応の一例を紹介する(被害者は模擬)。

① 事件の認知

「ショッピングセンターで男が刃物で次々と買い物客を襲っている」との110番通報を受理した。警察官を現場に派遣するとともに被害状況を確認したところ、複数の負傷者が発生した重大事件と判明したことから、早期に被害者支援体制を構築して指定被害者支援要員を派遣した。

 
指定被害者支援要員による付添い
指定被害者支援要員による付添い

犯罪被害者等への適切な支援を行うため、必要な人数の指定被害者支援要員を派遣します。

犯罪被害者等の置かれた状況は様々で、時間の経過とともに直面する問題も変わってきますので、指定被害者支援要員は、被害者の付添い支援や刑事手続等の説明のほか、被害者からの心配事の相談受理など犯罪被害者等に寄り添った活動を継続的に行っていきます。

指定被害者支援要員制度

「指定被害者支援要員制度」とは、専門的な犯罪被害者等支援が必要とされる事案が発生したときに、あらかじめ指定された警察職員(指定被害者支援要員)が事件発生直後から各種被害者等支援活動を推進する制度であり、各都道府県警察で導入されている。令和4年末現在、全国で3万8,349人が指定されている。

② 病院への付添い

重傷を負った被害者が搬送された病院に指定被害者支援要員が向かうとともに、本人に代わって家族への連絡を行った。突然の出来事に混乱する家族に対し、その心情に配意しつつ、被害の状況を説明した。

病院等への付添いの際は、犯罪被害者等のプライバシーの確保に気を付けています。

また、犯罪被害者等に被害等の状況を確認する際は、その行為自体が二次的被害を生じさせてしまうおそれもあることから、専門的研修で学んだ犯罪被害者等の心理状況を意識しながら、対応を行っています。

 
病院への付添い
病院への付添い

③ 被害者の手引の交付

犯罪被害者等に対し、被害者の手引を交付し、今後の刑事手続や各種被害者等支援制度の説明を行った。

犯罪被害者等にとって、犯罪被害者等支援の内容や、刑事手続に関することは、余りなじみのないものであるので、丁寧な説明をするよう心掛けています。

 
被害者の手引
被害者の手引

④ 被害者連絡の実施

被疑者が逮捕されたことを伝えるため、犯罪被害者等に対し、事件を担当する捜査員から連絡を行った。あわせて、最近の生活状況を聴取すると、犯罪被害者等が強い精神的ショックを受けていることが判明した。

捜査の状況等に関する情報は、犯罪被害者等にとって、非常に関心の高いものであるため、丁寧な伝え方を心掛けています。

 
被害者連絡
被害者連絡

⑤ 精神的負担の軽減

犯罪被害者等の一部には、強い精神的ショックにより日常生活に支障が生じていたため、カウンセリングに関する専門知識を有する警察職員によるカウンセリングを実施した。

犯罪被害者等は、体験したことのない強いストレスにさらされることから、身体的にも精神的にも不調が伴います。劇的な回復は難しくても、少しずつ前を向けるようなお手伝いを心掛けています。

 
カウンセリング
カウンセリング

⑥ 経済的負担の軽減

犯罪被害者等に対し、犯罪被害者等給付金(重傷病給付金、遺族給付金)の申請について教示した。

警察では、犯罪被害者等の経済的負担を軽減するため、犯罪被害給付制度や各種公費負担制度(注)を運用しています。支援に携わる職員がこれらの制度を理解した上で、犯罪被害者等の置かれた状況等に十分配意し、適時適切に確実な教示を行うことが重要であり、様々な場を通じて、関係職員に対する教育訓練を徹底しています。

注:97頁参照

 
関係職員への教育訓練
関係職員への教育訓練

⑦ 関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が公判への参加を要望したため、犯罪被害者等の同意を得て、犯罪被害者等早期援助団体(注)に対し、犯罪被害の概要に関する情報提供を行い、犯罪被害者等への付添いを依頼した。

犯罪被害者等のニーズは、生活上の支援をはじめ、医療や公判に関することなど、極めて多岐にわたります。よりきめ細かな支援を行うため、犯罪被害者等早期援助団体や地方公共団体の職員と連携を図りながら、犯罪被害者等のニーズに対応した支援活動の推進に努めています。

注:98頁参照

 
関係機関・団体との訓練
関係機関・団体との訓練


前の項目に戻る     次の項目に進む