第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動
第1節 犯罪情勢とその対策
令和4年(2022年)の刑法犯認知件数の総数は、20年ぶりに前年比増加となり、その内訳をみると、街頭犯罪(注1)及び重要犯罪(注2)が共に増加しており、今後の動向について注視すべき状況にある。
刑法犯認知件数の総数に占める割合が大きい街頭犯罪は、20万1,772件と前年比で14.4%増加しており、その中でも、罪種別で増加件数が多い自転車盗、傷害及び暴行については、新型コロナウイルス感染症の感染状況の変化等による人流の増加が一定程度影響したとみられる。
また、重要犯罪は、9,535件と前年比で8.1%増加しており、その内訳をみると、殺人及び強盗は前年からほぼ横ばいである一方、強制性交等及び強制わいせつがいずれも2年連続の増加となった。強制性交等は、平成29年(2017年)の刑法の一部改正以降で最多となった。
特殊詐欺については、認知件数、被害額が共に前年より増加するなど、深刻な情勢が続いており、サイバー事案については、ランサムウェアによる被害が広範に及んでいるほか、国家を背景に持つ集団によるサイバー攻撃も確認されているなど、極めて深刻な情勢が続いている。
人身安全関連事案については、児童虐待又はその疑いがあるとして警察から児童相談所に通告した児童数が過去最多に上るなど、注視すべき状況にある。
加えて、令和4年7月には、街頭演説中の安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃を受け殺害されるという重大事件が発生し、翌年の令和5年4月には、演説を予定していた岸田首相に向けて爆発物が投てきされる事案が発生した。また、SNSで実行犯を募集する手口により、一般住宅等において多額の現金や貴金属等が強取される強盗等事件が広域で発生するなど、国民に不安を与えるような事件が相次いで発生した。さらに、令和5年5月、長野県中野市において、猟銃等を用いて警察官2人を含む4人が殺害されるという重大事件が発生した。
以上を踏まえれば、我が国の犯罪情勢は厳しい状況にあると認められる。
注1:路上強盗、ひったくり、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗、車上ねらい、部品ねらい及び自動販売機ねらいのほか、強制性交等、強制わいせつ、略取誘拐・人身売買、暴行、傷害及び恐喝のうち街頭で行われたもの
注2:殺人、強盗、強制性交等、強制わいせつ、放火、略取誘拐及び人身売買
1 刑法犯
(1)刑法犯の認知・検挙状況
刑法犯の認知・検挙状況の推移は、図表2-1のとおりである。

(2)重要犯罪の認知・検挙状況
重要犯罪の認知・検挙状況の推移は、図表2-2のとおりである。

① 殺人
殺人の認知・検挙状況の推移は、図表2-3のとおりである。



② 強盗
強盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-6のとおりである。



③ 強制性交等・強制わいせつ
強制性交等の認知・検挙状況の推移は、図表2-9のとおりである。
また、強制わいせつの認知・検挙状況の推移は、図表2─10のとおりである。


④ 放火
放火の認知・検挙状況の推移は、図表2-11のとおりである。

⑤ 略取誘拐・人身売買
略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移は、図表2-12のとおりである。略取誘拐・人身売買の認知件数を被害者の男女別でみると、女性が被害者である割合は、令和4年は82.6%であった。

(3)刑法犯による身体的被害の状況
刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移は、図表2-13のとおりである。
