特集 技術革新による社会の変容と警察の新たなる展開

第3節 今後の展望

科学技術が急速に発展し、社会に大きな変革をもたらしている中で、警察は、時代の変化を的確に把握し、新たに生じ、又は変容する脅威に的確に対応できるよう科学技術を最適に利活用していくなど、不断の努力を重ねる必要がある。

そのため、今後、次のような課題に重点的に取り組むこととしている。

1 警察における科学技術政策の総合的かつ強力な推進

少子高齢化等の進展に伴い、警察におけるマンパワーの維持・向上が課題となっており、警察職員のワークライフバランスの確保等にも努めている中で、一層複雑化する治安情勢に対応していくためには、AI、無人航空機、測位技術、バイオテクノロジーといった技術革新の成果を警察活動に積極的に取り入れ、警察活動の高度化・合理化を図ることが不可欠である。

このため、第2節で述べたとおり、警察庁では、所管行政に関する総合調整権限を有する長官官房に技術的な知見やリソースを集約し、一元的に技術政策を推進する体制を構築するため、令和4年(2022年)4月、長官官房に技術総括審議官等から成る技術組織を設置し、警察における技術政策推進の司令塔機能を強化した。今後は、この長官官房技術組織が中心となって、幅広い分野の技術を警察活動に取り込み、活用することとしている。

科学技術を警察活動に的確に導入するためには、各種警察活動における技術ニーズを全国的に把握する必要がある。社会経済情勢の目まぐるしい変化に伴い、都道府県警察の技術ニーズについては、絶えず変容していくため、警察庁では、全国的な調査分析を継続的に実施することとしている。他方で、科学技術自体についても、世界各国における研究開発を通じて日進月歩で発展していることから、警察庁では、国内外の企業、学術研究機関、法執行機関等から幅広く、警察活動に導入し得る技術シーズの動向や研究開発状況等に関する情報を継続的に集約するとともに、その結果も踏まえて、都道府県警察の潜在的な技術ニーズを把握し、技術政策の提案、調整等を行うこととしている。

そして、こうしたプロセスを通じて把握した技術ニーズに応えるべく、技術シーズを警察活動に最適なものとして実装していくためには、警察自らが科学警察研究所等において研究開発を行うことはもとより、外部の研究機関等と連携して研究を行うほか、府省横断的な研究開発プログラム、ファンド事業等を効果的かつ戦略的に活用するなど、あらゆる方策を効果的に駆使して開発・導入を進めることが不可欠である。

将来にわたって、国民の安全・安心を守るため、警察には、各種技術の開発・導入を進めることにより、従来の方法では対処が困難又は不可能であった領域にも挑み、高度な警察活動を実現すべく、科学技術政策を総合的かつ強力に推進していくことが求められている。

 
図表特-20 警察活動への技術的イノベーションの導入促進モデル
図表特-20 警察活動への技術的イノベーションの導入促進モデル


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