第2節 先端技術等の活用による警察活動の高度化・合理化
1 現代における警察の課題と先端技術等の活用
(1)少子高齢化等の進展による社会構造の変容に適応するためのイノベーション
我が国の総人口は令和3年(2021年)10月1日現在で約1億2,550万人となっており、11年連続で減少しているほか、総人口に占める65歳以上人口の割合は28.9%と過去最高となり、他の先進諸国と比較しても最も高い水準にある。日本社会は、人口減少や急速な高齢化等に直面しており、今後、我が国の総人口は、長期の人口減少過程に入り、2053年には1億人を割るという推計がある。
他方、我が国では、IoTをはじめとしたサイバー空間の利用を前提とする様々な技術・サービスが登場しているほか、自動運転の技術の実用化、FinTechの推進等に向けて官民挙げて取組が進められるなどしており、人々の社会経済活動の在り方が刻々と変化している。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、コミュニケーション手段がオンラインを中心としたものへ移行し、様々な場面においてサイバー空間や先端技術の利用が拡大するなど、国民一人一人の行動が一層変化しているところである。今後、こうしたことの影響が我が国の産業構造や都市と地方の関係性等について、社会全体を急速に、かつ、大きく変容させていく可能性もある。
警察は、このような社会の変化に適応し、新たに生じ、又は変容する脅威に適切に対応していく必要がある。そのためには、人口減少等により限られた人的・財政的資源の下で最大限の効果を上げることができるよう、AIや無人航空機といった先端技術等を積極的に活用することを通じて警察力強化を図ることが求められている。
(2)近年大きく変容する国民生活の実相に適応し続けるための警察行政の実現
前述のとおり、少子高齢化の影響が顕在化しつつある我が国において、情報通信技術を最大限に活用し、国民にとって豊かで質の高い生活を実現するため、政府は、令和3年3月に閣議決定された「科学技術・イノベーション基本計画」において、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会」であるSociety 5.0を実現することを掲げている。
また、新型コロナウイルス感染症への対応に際して、地域・組織間で横断的なデータの活用が十分にできないなど、官民においてデジタル化をめぐる様々な課題が明らかになったことから、政府は、令和4年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、社会のデジタル化を強力に推進し、社会全体の生産性の向上を図るとともに、国民一人一人のニーズやライフスタイルに合ったサービスが提供され、継続的に力強く成長する社会の実現を目指すこととしている。
こうした政府の各種方針等を踏まえて、警察においても、デジタル化施策を強力に推進することにより、警察が所管する行政手続のオンライン化等を進め、国民の利便性向上や負担軽減を図る必要が生じている。
