第6章 公安の維持と災害対策

2 警備実施

(1)警衛・警護

① 警衛

警察では、皇室と国民との親和に配意した警衛を実施し、御身辺の安全確保と歓送迎者の雑踏等による事故防止を図っている。

令和3年中の主な行幸は図表6-11、主なお成りは図表6-12のとおりである。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、全国植樹祭、国民体育大会、全国豊かな海づくり大会、国民文化祭等の様々な行事がオンラインによる行幸啓又は中止となった。

 
東京オリンピック競技大会開会式に御臨席される天皇陛下(アフロ社)
東京オリンピック競技大会開会式に御臨席される天皇陛下(アフロ社)
 
図表6-11 主な行幸(令和3年)
図表6-11 主な行幸(令和3年)
 
図表6-12 主なお成り(令和3年)
図表6-12 主なお成り(令和3年)
② 警護

警察では、要人の身辺の安全を確保するため、警護を実施しているが、令和4年7月8日、奈良市内において、警護対象者である安倍晋三元内閣総理大臣が街頭演説中に銃撃を受け、殺害されるという重大事案が発生した。

警察庁においては、警察が組織として今回の警護を実施していたにもかかわらず、警護対象者の生命を守ることができなかったことを極めて重く受け止め、次長を長とする「検証・見直しチーム」を立ち上げ、同警護の問題点を明らかにする検証作業を行うとともに、検証の結果を踏まえて、今後講じるべき具体的な対策を検討した。

検証・見直しに当たっては、11回にわたって国家公安委員会に経過を報告し、同委員会における議論を踏まえつつ作業を進め、令和4年8月25日、報告書(注)を取りまとめた。同日、同委員会においては、新たな警護要則を制定し、警護における警察庁の関与を強化することとした。

令和5年には主要国首脳会議(G7サミット)が開催される予定であり、警察では、新たな警護要則に基づく措置を確実に講じるなど、警護に万全を期すこととしている。

注:「令和4年7月8日に奈良市内において実施された安倍晋三元内閣総理大臣に係る警護についての検証及び警護の見直しに関する報告書」(https://www.npa.go.jp/bureau/security/kennsyouminaosihoukokusyo.pdf
QRコード 警察庁ウェブサイト

 
安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃を受けた現場を確認する谷国家公安委員会委員長(令和4年8月、大和西大寺駅北口)
安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃を受けた現場を確認する谷国家公安委員会委員長(令和4年8月、大和西大寺駅北口)
 
図表6-13 警護の検証と見直し
図表6-13 警護の検証と見直し

(2)機動隊の活動

都道府県警察には、集団警備力によって有事即応体制を保持する常設部隊として機動隊が設置されているほか、管区機動隊、第二機動隊等が設置されている。

また、専門的な知見・能力が求められる様々な事案に対応できるよう専門部隊が設置されており、その能力を生かし、各種活動に従事している。

(3)雑踏警備

祭礼等の行事に際して多数の人が集まることにより事故が発生するおそれがある場合には、雑踏事故の未然防止を図るため、警察ではあらかじめ行事の主催者や施設の管理者に対して必要な安全対策をとるよう要請しているほか、警察部隊の投入が必要と判断される場合には、所要の体制を確立し雑踏警備を行っている。

(4)警察用航空機(ヘリコプター)の活用

警察では、ヘリコプターテレビシステムやホイスト救助装置(注)等の各種資機材が装備された警察用航空機(ヘリコプター)を全国に配備している。

令和3年中には、警察用航空機を災害対応における警察機動力の中核として位置付ける制度改正を行うなど、大規模災害対応における警察用航空機の広域運用の強化等を図った。また、警察用航空機の機動力を生かし、パトロール、被疑者の追跡、重大事件発生時における情報収集等を行っている。

注:航空機の機外に装着した電動装置を用いて、ワイヤーで人や物を昇降させるための装置



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