警察活動の最前線
D-SUTとしての派遣を終えて
前 近畿管区警察局広域調整部災害対策官(現 兵庫県警察本部警備部公安第二課)
大西 直人(おおにし なおと)

令和3年7月3日の静岡県熱海市伊豆山地区における大規模な土石流災害の発生を受けて、私は、警察庁災害対応指揮支援チーム(D-SUT)の一員として被災地に派遣されました。
D-SUTは、令和3年4月に発足したチームであり、その任務は、被災地の警察が行う災害対応の指揮、調整機能を支援するものです。私は、熱海市役所に設置された合同調整所において、防災関係機関との調整、警察庁との連絡等の職務に従事しました。
被災地では、発災直後から防災関係機関による懸命な各種活動が行われていましたが、水を大量に含んだ土砂や流木等がその活動を阻んでおり、捜索活動は困難を極めていました。中でも、多くの住宅が流されていたことから、安否不明者の所在どころか人数の把握も困難な状況は、捜索活動の方針を決める上で大きな問題でした。
そのような状況下、合同調整所では、消防や自衛隊等関係機関が互いの情報を共有するとともに、各機関の長所を生かし、互いの活動を補うかたちで調整を行った結果、効果的な捜索活動を実施することができました。
合同調整所の任務は、防災関係機関との調整のほかにも多岐にわたりましたが、現場の部隊や管轄の警察署、関係機関の協力により、発災初期における支援としての役割を果たすことができたと思っています。
私たち警察官は、地震や風水害の発生時等の現場活動において、一人でも多くの命を救うという使命を担っています。この使命を果たしていくためには、現場で活動する部隊の技術を向上させることはもちろん、関係機関との綿密な連携や的確な指揮を通じた円滑な部隊活動により、災害警備活動を効率的に運用することが重要であり、今後も総合的な災害対処能力の向上に努めてまいります。

厳しい環境下でも国民の期待に応える救助活動
長野県警察本部警備部警備第二課航空隊
矢満田 修平(やまんた しゅうへい)

私が警察用航空機の操縦士になったきっかけは、警察学校初任科入校中の研修で航空隊を訪れたときに、長野県警察の航空隊が全国トップクラスの山岳遭難救助実績を誇っていることを知り、自分も操縦士として多くの人命を救助したいと思い、操縦士要員の選抜試験に応募したことです。
航空隊は、災害発生時等における情報収集のほか、パトロール、遭難者の救助活動等、各部門の幅広い業務を支援していますが、特に3,000メートル級の山々が多く、険しい地形、急変する気象条件等といった長野県特有の極めて厳しい環境下での山岳救助活動では、航空機の安全運航が求められます。
このような中、私は、これまで約100件の救助活動に従事しましたが、中でも印象深いのは、初めて機長として出動したときのことです。
当日は、初めて機長として出動することに加え、断続的に薄い霧がかかる厳しい気象条件であり、緊張感がありましたが、先輩操縦士の助言を受けつつ、天候の推移を見極めて何とか遭難者を救助することができました。
後日、救助した遭難者から、お礼と怪我(けが)が完治した旨を伝える手紙をいただき、遭難者の早期の社会復帰に貢献できたことを実感しました。
私は、操縦士としてまだまだ未熟ではありますが、今後も更なる技能の向上と隊員相互の連携強化に努めるとともに、安全運航を継続し、的確に救助活動等を行うことにより、国民の期待と信頼に応えていきたいと思います。
