第6章 公安の維持と災害対策

第4節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

① 自然災害の発生状況(注)

令和3年(2021年)中は、地震、大雨、台風等により、死者・行方不明者142人、負傷者1,915人等の被害が発生した。平成29年(2017年)から令和3年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表6-10のとおりである。

注:数値は、いずれも令和4年4月末現在のもの。

 
図表6-10 自然災害による主な被害状況の推移(平成29年~令和3年)
図表6-10 自然災害による主な被害状況の推移(平成29年~令和3年)
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② 福島県沖を震源とする地震(注)

令和3年2月13日午後11時7分、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、宮城県蔵王町及び福島県相馬市・国見町・新地町で震度6強を観測した。この地震により死者2人等の被害が発生した。宮城県警察及び福島県警察をはじめとする関係都県警察では、被災状況についての情報収集等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和4年4月20日現在のもの。

③ 令和3年7月1日からの大雨(注)

令和3年7月1日から同月3日にかけて、前線の影響により、東海地方から関東地方南部を中心に記録的な大雨となり、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生した。特に、静岡県熱海市では、同月3日に土石流が発生するなどし、死者26人、行方不明者2人等の被害が発生した。

警察では、5管区27都道府県警察から広域緊急援助隊等の警察災害派遣隊延べ約4,100人及び2都県警察から警察用航空機延べ8機を静岡県警察に派遣し、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和3年12月3日現在のもの。

 
土石流発生現場における幼児の救助活動(静岡)
土石流発生現場における幼児の救助活動(静岡)

CASE

令和3年7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流を受けた災害警備活動において、警察が保有する無人航空機(ドローン)を飛行させて上空から映像を撮影し、リアルタイムで官邸等に送信するとともに、救出救助活動等に活用した。

 
無人航空機(ドローン)による被災状況の撮影
無人航空機(ドローン)による被災状況の撮影
④ 台風第9号及び第10号(注)

令和3年8月8日に鹿児島県へ上陸した台風第9号及び同日に関東甲信地方へ接近した台風第10号並びにこれらから変わった温帯低気圧の影響により、全国的に大雨となった。この大雨により、死者2人等の被害が発生した。島根県警察をはじめとする関係都道府県警察では、被災状況についての情報収集等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和3年8月15日現在のもの。

⑤ 令和3年8月の大雨(注)

令和3年8月11日から同月19日にかけて、前線の影響により、西日本から東日本までの広い範囲で大雨となり、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生した。この大雨により、死者13人等の被害が発生した。長崎県警察及び福岡県警察をはじめとする関係都道府県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の避難誘導及び救出救助、交通対策等の活動を実施した。

注:数値は、いずれも令和3年12月14日現在のもの。

 
行方不明者の捜索活動(長崎)
行方不明者の捜索活動(長崎)

(2)大規模災害への備え

① 警察庁災害対応指揮支援チーム(D-SUT)(注)の発足

警察では、東日本大震災をはじめとした大規模災害における反省・教訓を踏まえ、災害に関する危機管理体制を構築するため、組織横断的な取組を行っている。

令和3年4月には、被災地を管轄する都道府県警察の長等が行う災害警備活動の指揮等に関する助言を行うほか、これらの都道府県警察と警察庁災害警備本部等との連携を強化するため、大規模災害対応に関する専門的な知識を有する者で構成される、警察庁災害対応指揮支援チーム(D-SUT)を発足させた。

注:National Police Agency Disaster Response Command Support Teamの略

CASE

警察庁では、令和3年7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流を受けて、同日から同月12日までの間、D-SUTを静岡県警察本部、熱海市対策本部、被災現場の合同調整所等へ派遣し、関連情報の収集、関係機関との連絡調整等の支援を実施した。

 
合同調整所での調整状況
合同調整所での調整状況
② 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震及び首都直下地震はもとより、その他のいかなる大規模災害にも的確に対処できるよう、従前の取組内容を不断に見直し、平素の業務における災害に関する危機管理体制の点検及び構築を持続的に推進するとともに、災害警備に資する先端技術を積極的に取り入れ、一層の災害対処能力の向上を目指していくこととしている。



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