第6章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向と対策

右翼は、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。

令和3年中、中国をめぐっては、新型コロナウイルス感染症の流行や尖閣諸島周辺における中国海警局に所属する船舶の動向を捉えた抗議行動を行った。韓国をめぐっては、竹島問題、慰安婦問題や旧朝鮮半島出身労働者問題を捉えた抗議行動を行った。ロシアをめぐっては、北方領土問題を捉え、北朝鮮をめぐっては、拉致問題や弾道ミサイルが繰り返し発射されたことを捉え、それぞれ抗議行動を行った。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-8のとおりである。

 
右翼の街頭宣伝活動(11月、東京)
右翼の街頭宣伝活動(11月、東京)
 
図表6-8 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和3年)
図表6-8 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和3年)
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CASE

右翼団体幹部の男(55)ら2人は、令和3年2月、韓国大使館に対して街頭宣伝活動を行っていた際、街頭宣伝車に装備された拡声機を用いて暴騒音を生じさせ、同行為を中止するよう警察官から命令を受けたにもかかわらず、これに従うことなく暴騒音を継続し、同命令に違反したことから、同男らを拡声機による暴騒音の規制に関する条例違反で現行犯逮捕した(警視庁)。

警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、令和3年中、右翼運動に伴う事件(注)の検挙件数は44件、検挙人員は54人であった。

右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなどもあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしている。このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は50件、検挙人員は55人であった。

また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、令和3年中は、威力業務妨害罪等で16件21人を検挙した。

さらに、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めた結果、令和3年中、拳銃1丁(前年中:3丁)を押収した。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議行動等を行う過程で引き起こした事件

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況(2月、東京)
街頭宣伝活動に対する取締り状況(2月、東京)

CASE

右翼団体代表の男(39)ら2人は、資金獲得目的で、稼働収入があるにもかかわらず、これがないかのように装い、虚偽の内容が記載された失業認定申告書等を公共職業安定所に提出し、失業給付金をだまし取ったことから、令和3年6月、同男らを詐欺罪で逮捕した(静岡)。

CASE

右翼団体代表の男(70)ら3人は、被害者方周辺等において、街頭宣伝車に装備された拡声機を用いるなどして「反社会勢力との密接交際をやめろ」、「覚悟をもって討伐を宣誓する」などと街頭宣伝活動を行い、名誉を毀損するとともに、団体の威力を示して脅迫したことから、令和3年1月、同男らを名誉毀損罪及び暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で逮捕した(広島)。

(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

令和3年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国において約20件のデモが行われた。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

警察では、平成28年に施行されたヘイトスピーチ解消法を踏まえ、引き続き、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

 
右派系市民グループのデモ(2月、東京)
右派系市民グループのデモ(2月、東京)

CASE

右派系市民グループ関係者の男(53)は、令和3年9月、神奈川県内において、駅前での街頭宣伝の準備中、同街頭宣伝に反対する男性に体当たりをして転倒させる暴行を加えたことから、同男を暴行罪で現行犯逮捕した(神奈川)。



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