第6章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指す極左暴力集団は、依然として「テロ、ゲリラ」の実行部隊である非公然組織を擁するとともに、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んでいる。

令和3年中、極左暴力集団は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う政府の対策に対し、「コロナ便乗の改憲阻め」、「コロナ解雇粉砕」などと主張し、抗議行動を行った。また、反戦・反基地運動や反原発運動に取り組み、これらを通じて同調者や支持者の獲得を図った。

革マル派(注1)は、同年中、令和2年9月に発刊した同派創始者である故黒田寛一前議長の著作集全40巻のうち第2巻から第4巻までを刊行し、同書を活用した学習を機関紙で呼び掛けるなど、故黒田前議長が提唱した理論の継承に引き続き取り組んだ。また、同派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、令和3年6月の定期大会において、引き続き、同派設立時の副議長であった故松嵜明元JR東労組会長が提唱した労働運動理論に基づき組合活動を進めていく方針を決定した。

中核派(注2)は、同年2月、第27回全国委員会総会を開催した。同総会では、令和2年9月に約50年ぶりに公の場に姿を現した清水丈夫議長が、「階級的労働運動を通してしか、絶対にこの情勢を革命に転化することはできない」と発言するなど、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を基本方針として各種闘争に取り組んでいくことを改めて確認した。このほか、引き続き労働運動や大衆運動に介入する中で勧誘活動に取り組んだ。

革労協主流派(注3)及び革労協反主流派(注4)は、令和3年の年頭の機関紙において、非公然組織「革命軍」のアピール文をそれぞれ発し、「武装闘争の飛躍」を主張した。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

注2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

注3:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。

注4:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
「労働者・学生統一行動」(6月、東京)
「労働者・学生統一行動」(6月、東京)

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団による「テロ、ゲリラ」を未然に防止するための諸対策を推進しており、その過程で明らかになった違法行為は、厳正に取り締まっている。令和3年5月には、指示に従わなかったとして革労協反主流派の影響下にある団体の関係者を脅した同派最高幹部1人を、脅迫罪で逮捕した(大阪)。また、同年6月には、虚偽の申請により運転免許証の交付を受けた中核派系全学連(注)活動家1人を、免状不実記載罪で逮捕した(京都及び神奈川)。

注:正式名称を全日本学生自治会総連合という。



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