第6章 公安の維持と災害対策

第3節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する「Aleph(アレフ)」をはじめとする主流派と、松本の影響力がないかのように装う「ひかりの輪」を名のる上祐派が活動している。教団は、松本が確立した教義に基づいて、松本サリン事件、地下鉄サリン事件等の数々の凶悪事件を引き起こし、多くの犠牲者を出した。

このため、平成12年(2000年)2月以降、教団に対し、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法に基づき、公安調査庁長官の観察に付する処分が行われており、令和3年(2021年)1月には、教団の危険性が改めて認定され、7回目となる処分の期間更新決定(令和6年1月末まで)がなされた。また、令和3年10月、公安調査庁長官は、「Aleph(アレフ)」について、観察処分を受けた団体に義務付けられた報告がなされておらず、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難になっているとして、団体規制法に基づき、公安審査委員会に再発防止処分を請求した(注)

教団は、依然として松本及び松本の説く教義を基盤としており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大後も、インターネットを活用するなどして勧誘等の活動を継続している。

注:令和3年11月、「Aleph(アレフ)」から報告がなされたとして、同請求は撤回された。

(2)オウム真理教対策の推進

こうした教団に対し、警察では、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進している。

令和3年5月には、教団の施設として使用する目的であるにもかかわらず、これを偽ってマンションの部屋の賃貸借契約を結んだとして、主流派在家信者1人を詐欺罪で逮捕した(神奈川)。また、同月、教団名を隠してヨーガ講義の勧誘活動を行い、受講契約時に契約書等の必要な書面を交付しなかったなどとして、主流派出家信者1人を特定商取引に関する法律違反(申込書面交付義務違反等)で逮捕した(京都)。

また、教団は、15都道府県に30か所の拠点施設を有しているが、拠点施設が所在する地域においては、教団の活動に対する不安感が強く、教団の進出に反対する地域住民が対策組織を結成している地域もある。警察では、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺における警戒警備活動を行うとともに、教団の現状や警察の取組について、地域住民や地方公共団体に向けた広報活動を行うことにより、安心感の醸成を図っている。

さらに、教団は、一連の凶悪事件を知らない若い世代を主な対象として、教団名を隠した勧誘活動を行っていることから、警察では、巧妙な勧誘活動の手口について、各種機会を通じ、学校等に対して広報している。

 
図表6-7 オウム真理教の拠点施設等(令和3年末現在)
図表6-7 オウム真理教の拠点施設等(令和3年末現在)


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