警察活動の最前線
薬物を憎んで人を憎まず
前 三重県警察本部刑事部組織犯罪対策課薬物銃器指導係(現 三重県鈴鹿警察署刑事第二課長)
奥山 浩次(おくやま こうじ)

私は、平成6年に、当時、警察署で薬物捜査を担当していた防犯課(現在の生活安全課)に配属されて以来28年間、薬物捜査に従事しており、現在は警察署等の捜査員に対する薬物捜査の指導を担当しています。
薬物捜査は特にいかなる犯罪が成立するか否かの判断が重要であり、その判断が事件を左右するといっても過言ではないことから、平素より判例集や参考図書を熟読するなどして捜査技能等の向上に努めています。
また、薬物は、温かな家庭から、大切な家族を奪っていきます。
被害者なき犯罪と思われることもある薬物事犯ですが、薬物捜査に長く携わる中で、検挙した薬物の乱用者によって家庭崩壊寸前まで追い込まれた家族からの感謝や更生への願いを数多く受け止めてきました。
こうした経験から、薬物捜査のやりがいや薬物犯罪組織と対峙する強い気持ちを常に持って薬物捜査に臨んでいます。
加えて、実際に自分が見てきた薬物の恐ろしさについて、講話等を通じて特に将来ある若者達に実感をもって伝えるなど、薬物事犯の検挙だけではなく、薬物乱用防止にも積極的に取り組んでいます。
今後は、自己の知識や経験を駆使して、時代に適した新しい捜査手法を取り入れつつ、それらを若手警察官に伝承して、後継者育成にも努めようと考えています。
これからも、「薬物を憎んで人を憎まず」の精神で、捜査による「供給の遮断」と薬物乱用防止活動による「需要の根絶」に邁進していく所存です。

犯罪収益に着目した捜査~マネー・ローンダリング事犯の取締り~
福岡県警察本部暴力団対策部組織犯罪対策課マネー・ローンダリング対策係
坂田 早紀(さかた さき)

私は、犯罪行為によって得た収益を隠匿するなどのマネー・ローンダリング事犯の捜査を担当しています。
犯罪収益は、捜査の網の目をかいくぐるような高度に複雑化した取引によって、暗号資産をはじめ様々な資産に形を変えています。資産の流れを正確に読み解き、追跡していくためには、これまでの知識、経験だけではなく、金融環境の変化に伴う新たな犯行手口の分析や多角的な情報分析能力等が必要となります。
また、この種の犯罪は、海外に犯罪収益を隠匿するなど、国内にとどまらず世界規模で行われるおそれがあるため、外国捜査機関との連携も不可欠になっています。複雑で困難な捜査を伴うこともありますが、犯罪組織に大きな打撃を与える対策を行うことができる分野です。
犯罪組織が得た不正な利益が、新たな犯罪に再投資されることなどを未然に防ぎ、健全な経済活動、そして平穏な社会生活を守ること、また、犯罪収益対策について、金融機関等だけでなく、国民に対し、その重要性を伝えていくことも私たちの任務だと感じています。
今後も関係機関との緊密な連携、情報の分析を強化し、資金面から犯罪組織を摘発することで、公共の安全と秩序の維持に努めていきます。
