第3節 来日外国人犯罪対策
1 来日外国人犯罪の情勢
(1)来日外国人犯罪の組織化の状況
令和3年(2021年)中の来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合は40.1%と、日本人(12.6%)の約3.2倍に上っている(注)。罪種別にみると、万引きで48.9%と、日本人(2.8%)の約17.5倍に上る。
このように、来日外国人による犯罪は、日本人によるものと比べて組織的に行われる傾向がうかがわれる。
注:来日外国人と日本人の共犯事件については、主たる被疑者の国籍・地域により、来日外国人による共犯事件であるか、日本人による共犯事件であるかを分類して計上している。

(2)組織の特徴
来日外国人で構成される犯罪組織についてみると、出身国や地域別に組織化されているものがある一方で、より巧妙かつ効率的に犯罪を行うため、様々な国籍の構成員が役割を分担するなど、構成員が多国籍化しているものもある。このほか、面識のない外国人同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら犯行に及んだ例もみられる。
また、近年、他国で行われた詐欺事件による詐取金の入金先口座として日本国内の銀行口座を利用し、入金後にこれを日本国内で引き出してマネー・ローンダリングを行うといった事例があるなど、犯罪行為や被害の発生場所等の犯行関連場所についても、日本国内にとどまらず複数の国に及ぶものがある。
(3)犯罪インフラ(注)の実態
来日外国人で構成される犯罪組織が関与する犯罪インフラ事犯には、地下銀行による不正な送金、偽装結婚、偽装認知、不法就労助長、旅券・在留カード等偽造等がある。
地下銀行は、不法滞在者等が犯罪収益等を海外に送金するために利用されている。また、偽装結婚、偽装認知及び不法就労助長は、在留資格の不正取得による不法滞在等の犯罪を助長しており、これを仲介して利益を得るブローカーや暴力団が関与するものがみられるほか、近年では、在留資格の不正取得や不法就労を目的とした難民認定制度の悪用が疑われる例も発生している。偽造された旅券・在留カード等は、身分偽装手段として利用されるほか、不法滞在者等に販売されることもある。
注:81頁参照(第2章)
CASE
中国人の男(36)は、令和3年6月、在留カードを偽造し、SNSを利用して不法残留者から注文を受け付けて偽造在留カードを販売した。同年11月までに、同男を入管法違反(在留カード偽造・偽造在留カード提供)で、偽造在留カードを購入するなどしていたインドネシア人の男(26)ら3人を入管法違反(偽造在留カード収受等)で逮捕した(埼玉、群馬及び警視庁)。