2 暴力団犯罪の取締り
(1)検挙状況
暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者(以下「暴力団構成員等」という。)の検挙人員は、図表4-3のとおりであり、近年減少傾向にある。暴力団構成員等の総検挙人員のうち、覚醒剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等(注)(以下「伝統的資金獲得犯罪」という。)の検挙人員が占める割合は3割程度で推移しており、特に覚醒剤取締法違反の割合が大きく、依然として覚醒剤が暴力団の有力な資金源となっているといえる。他方、平成3年以降の検挙人員の罪種別割合をみると、図表4-4のとおりであり、恐喝、賭博及びノミ行為等の割合が減少しているのに対し、詐欺の検挙人員が占める割合が増加傾向にあるなど、暴力団が資金獲得活動を変化させている状況もうかがわれる。
注:公営競技をめぐって施行者以外の第三者が行う勝馬投票等類似行為等の競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法及びモーターボート競走法違反


(2)対立抗争事件等の発生
暴力団は、組織の継承等をめぐって銃器を用いた対立抗争事件を引き起こしたり、自らの意に沿わない事業者を対象とする、報復・見せしめ目的の襲撃等事件を起こしたりするなど、自己の目的を遂げるためには手段を選ばない凶悪性がみられる。
近年の対立抗争事件、暴力団等によるとみられる事業者襲撃等事件等の発生状況は、図表4-5のとおりである。これらの事件の中には、銃器が使用されたものもあり、市民生活に対する大きな脅威となるものであることから、警察では、重点的な取締りを推進している。

CASE
六代目山口組傘下組織の構成員の男(58)は、令和3年5月、倉敷市内の神戸山口組傘下組織の組長の自宅敷地内において、殺意をもって、同組長の自宅玄関扉に向けて機関拳銃等を発射した。同年6月、同男を殺人未遂罪等で逮捕した(岡山)。
(3)資金獲得犯罪
暴力団は、覚醒剤の密売、繁華街における飲食店等からのみかじめ料の徴収、企業や行政機関を対象とした恐喝・強要のほか、強盗、窃盗、各種公的給付制度を悪用した詐欺等、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っている。特に、近年、暴力団構成員等が主導的な立場で特殊詐欺に深く関与し、暴力団が特殊詐欺を有力な資金源の一つとしている実態が認められる。
また、暴力団は、実質的にその経営に関与している暴力団関係企業を利用し、又は共生者(注)と結託するなどして、その実態を隠蔽しながら、一般の経済取引を装った貸金業法違反、労働者派遣法違反等の資金獲得犯罪を行っている。
警察では、巧妙化・不透明化をする暴力団の資金獲得活動に関する情報の収集・分析をするとともに、社会経済情勢の変化に応じた暴力団の資金獲得活動の動向にも留意しつつ、暴力団や共生者等に対する取締りを推進している。
注:暴力団に利益を供与することにより、暴力団の威力、情報力、資金力等を利用し自らの利益拡大を図る者
CASE
令和元年11月、高齢者がキャッシュカードをだまし取られるなどした特殊詐欺事件の捜査を端緒として、神戸山口組傘下組織の幹部の男(46)が犯行グループを統括している実態を解明し、令和3年6月までに、同男を含むメンバー合計33人を詐欺罪等で逮捕した。さらに、同事件を契機として、同年8月までに、同組織の別の幹部の男(45)を含む合計19人を京都府暴力団排除条例違反(用心棒代受供与)等で逮捕した(京都)。