5 官民連携の推進
(1)日本サイバー犯罪対策センターとの連携
我が国における新たな産学官連携の枠組みとして平成26年から業務が開始されたJC3(注)では、産学官の情報や知見の集約・分析をし、その結果等を還元することで、脅威の大本を特定し、これを軽減し、又は無効化することにより、以後の事案発生の防止を図ることとしている。警察では、捜査関連情報等をJC3において共有し、産学におけるサイバーセキュリティに関する取組に貢献するとともに、JC3において共有された情報を警察活動に迅速・的確に活用し、安全で安心なサイバー空間の構築に努めている。
注:112頁参照

(2)サイバー防犯ボランティアに対する支援
サイバーパトロールにより発見した違法情報・有害情報をIHC、サイト管理者等に通報する取組やインターネット利用者に対する講演活動等を行うサイバー防犯ボランティアは、全国で264団体、7,276人(令和3年12月末現在)となっており、警察では、研修会を開催するなどして、こうした活動を行う団体の拡大と取組の活性化を図っている。

サイバー防犯ボランティアの活動の様子
CASE
香川県警察では、令和3年11月、JC3と連携して、サイバー防犯ボランティアに対する研修会を開催した。JC3の職員が、参加した大学生ボランティア約20人に対し、産業界から集約した情報や知見を踏まえたサイバーパトロールのポイント等について、講師として指導することにより、大学生ボランティアの技術や意識の向上等が図られた。

研修会の様子
(3)サイバーテロ対策協議会
警察では、各都道府県警察及びサイバー事案の標的となるおそれのある重要インフラ事業者等で構成される、サイバーテロ対策協議会を全ての都道府県に設置し、サイバー事案の脅威や情報セキュリティに関する情報提供、民間の有識者による講演及び参加事業者間の意見交換・情報共有を行っているほか、サイバー事案の発生を想定した共同対処訓練等を行っている。

サイバーテロ対策協議会
(4)サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク
警察では、情報窃取の標的となるおそれの高い先端技術を有する事業者等との間で、情報窃取を企図したとみられるサイバー事案に関する情報共有を行うサイバーインテリジェンス情報共有ネットワークを構築しており、このネットワークを通じて事業者等から提供された情報を集約するとともに、これらの事業者等から提供された情報及びその他の情報を総合的に分析し、事業者等に対し、分析結果に基づく注意喚起を行っている。
(5)不正プログラム対策協議会
警察では、警察庁及びウイルス対策ソフト提供事業者等で構成される不正プログラム対策協議会において、不正プログラム対策に関する情報共有を行っている。特に、警察からは、市販のウイルス対策ソフトで検知できない新たな不正プログラムに関する情報や未知のぜい弱性に関する情報を提供し、情報セキュリティ対策の向上を図っている。
(6)不正通信防止協議会
警察では、警察庁及びセキュリティ監視サービス又はセキュリティ事案に対処するサービスを提供する事業者で構成されるサイバーインテリジェンス対策のための不正通信防止協議会において、標的型メール攻撃等に利用される不正プログラムの接続先等の情報を共有することにより、我が国の事業者等が不正な接続先へ通信を行うことを防止している。
(7)高度な研究開発等を行う大学を標的としたサイバー事案への対策の推進
近年、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案が発生していることから、警察では、当該サイバー事案に関する情報収集・分析を強化するとともに、大学と連携し、サイバー事案をめぐる最新の情勢や被害防止対策等に関する情報共有及びサイバー事案の発生を想定した共同対処訓練を実施することなどにより、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案への対処能力の強化を図っている。
(8)事後追跡可能性の確保に向けた取組の推進
捜査における犯人の事後追跡可能性を確保するため、関係事業者等に対し、総務省の「電気通信事業者における個人情報保護に関するガイドライン」を踏まえた通信履歴の適切な保存、適切な本人確認・認証等の実施を要請している。
また、近年、MVNO(注1)が本人確認をせずに契約したSMS機能付きデータ通信専用SIMカードが、サイバー事案等に悪用された事例が確認されていることなどを踏まえ、都道府県警察では、SMS認証の代行に伴う違法行為(注2)の取締りを強化しているほか、警察庁では、令和3年1月、総務省と連携して、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会に対し、SMS機能付きデータ通信契約時の確実な本人確認の実施を要請した。同要請を受け、同委員会加盟事業者は、自主的な取組として、SMS機能付きデータ通信契約時の本人確認を実施することを申し合わせた。
注1:2頁参照(特集)
注2:2頁参照(特集)