第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

警察活動の最前線

鉄道警察隊員としての誇りと使命感


警視庁鉄道警察隊

永野 裕介(ながの ゆうすけ)

 
ピーポくん

警視庁鉄道警察隊では、令和3年に世間を震撼させた列車内における刃物等を使用した無差別殺人未遂事件等の発生を踏まえ、分駐所を拠点に列車警乗や不審者に対する職務質問に尽力し、鉄道施設内における刃物所持者等の検挙に努めています。

また、列車内で痴漢被害に遭った被害者の相談を受けて、犯人を検挙することも鉄道警察隊の任務の一つです。

以前、分駐所に13歳の女の子が母親と共に痴漢被害の相談に訪れてきた時のことです。彼女から被害の状況を聴取すると「通学時の電車内で同じ男にお尻や太腿を触られている」と涙をこらえながら痴漢被害を訴え、私はその姿を見て犯人検挙のため心を奮い立たせました。

翌日から彼女と共に列車に同乗して警戒をしていたところ、彼女が話した特徴と合致した男が現れ、彼女の後方に密着したので注視していると、彼女のお尻をなでるように触った瞬間を確認したので男を痴漢の現行犯として逮捕しました。

後日、彼女から電話で「犯人を捕まえてくれてありがとうございました。安心して通学できるようになりました」とうれしそうな声を聞いて鉄道警察隊員としての誇りとやりがいを感じることができました。

このように鉄道施設内における犯罪は多岐にわたりますが、取締りを徹底して都民、国民の皆様が安心して鉄道施設を利用できるようにすることが私たち鉄道警察隊員の使命です。

 
警視庁鉄道警察隊 永野 裕介

鑑識のプロを目指して


大阪府警察本部刑事部鑑識課機動鑑識第二係

中谷 晴香(なかたに はるか)

 
フーくん・ケイちゃん

機動鑑識は、殺人、放火等の凶悪事件の現場で、指紋をはじめとした犯人の特定につながる遺留資料等を集めて、事件を解決に導くプロ集団です。

私が憧れの機動鑑識に入り2年を経た頃、強盗殺人事件が発生しました。私は上司や先輩と一緒に指紋の採取等の鑑識活動を行いましたが、なかなか犯人の特定につながる有力な資料がなく、強い焦りが生じていました。

こうした中、関係者が、被害者は屋根裏に多額の現金を保管していたと話したことから、上司から屋根裏に続く通路や階段を中心に徹底した鑑識作業に当たるよう指示されました。その結果、階段の途中で途切れた真新しい足跡を発見し、さらには別の部屋から血の付いた手袋で触ったことにより付着したと思われる血痕を見つけることができたのです。

後に逮捕された犯人は三人組で、泥棒目的で家に入ったところ、被害者に出くわしたことから殺害したことが判明し、階段で屋根裏に行きかけたことや、殺害後、血痕を発見した場所から逃走したことが明らかになりました。

私は、この現場での経験を通じて、犯人を特定する資料を発見・採取するためには、指紋等を採取する技術だけではなく、犯人の行動を読み取り、冷静かつ広い視野で現場を観察する「鑑識眼」が必要だと学びました。

今後も犯罪の的確な立証のため、客観的な証拠の重要性は一層増していくものと思われることから、私は一つ一つ現場での経験を積み重ねていき、鑑識技術を日々研鑽(さん)していく中で「鑑識眼」も磨いていきたいです。

 
大阪府警察本部刑事部鑑識課機動鑑識第二係 中谷 晴香


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