警察活動の最前線
警察による犯罪被害者支援の例
警察では、犯罪被害者等が直面する様々な状況に応じた支援の充実を図っている。その支援について警察署及び警察本部における対応の一例を紹介する(被害者は模擬)。
① 事件の認知
「駅から歩いて帰宅する途中、突然背後から知らない人に刃物で刺された」との110番通報を受理した。警察官を現場に派遣するとともに、負傷部位・程度を聴取し、救急要請を行った。
事件発生直後から必要な支援を行うため、臨場した警察官からの報告を基に早期に被害者の状況を把握するよう努めています。

通信指令センター
② 病院への付添い
重傷を負った被害者が搬送された病院に指定被害者支援要員が向かうとともに、本人に代わって家族への連絡を行った。突然の出来事に混乱する家族に対し、その心情に配意しつつ、被害の状況を説明した。
病院等への付添いの際は、被害者やその家族のプライバシーの確保に気を付けています。
また、被害者やその家族に被害等の状況を確認する際は、その行為自体が二次的被害を生じさせてしまうおそれもあることから、専門的研修で学んだ被害者やその家族の心理状況を意識しながら、対応を行っています。

事情聴取への付添い
指定被害者支援要員制度
「指定被害者支援要員制度」とは、専門的な犯罪被害者等支援が必要とされる事案が発生したときに、あらかじめ指定された警察職員(指定被害者支援要員)が事件発生直後から各種被害者等支援活動を推進する制度であり、各都道府県警察で導入されている。指定被害者支援要員は、付添い支援や刑事手続等の説明のほか、被害者からの心配事の相談受理等、被害者に寄り添った活動を行っている。令和3年末現在、全国で3万9,289人が指定されている。
③ 被害者の手引の交付
病院に駆けつけた家族に対し、被害者の手引を交付し、今後の刑事手続や各種被害者等支援制度の説明を行った。
被害者や家族にとって、犯罪被害者等支援の内容や、刑事手続に関することは、余りなじみのないものであるので、丁寧な説明をするよう心掛けています。

被害者の手引
④ 被害者連絡の実施
被疑者が逮捕されたことを伝えるため、いまだ入院中の被害者に対し、事件を担当する捜査員から連絡を行った。あわせて、最近の生活状況を聴取すると、被害者が強い精神的ショックを受けていることが判明した。
捜査の状況等に関する情報は、被害者にとって、非常に関心の高いものであるため、丁寧な伝え方を心掛けています。

被害者連絡
⑤ 精神的負担の軽減
被害者は1週間の入院を経て退院したものの、強い精神的ショックにより日常生活に支障が生じていたため、カウンセリングに関する専門知識を有する警察職員によるカウンセリングを実施した。
被害者は、体験したことのない強いストレスにさらされることから、身体的にも精神的にも不調が伴います。劇的な回復は難しくても、少しずつ前を向けるようなお手伝いを心掛けています。

カウンセリング
⑥ 経済的負担の軽減
退院した被害者に対し、入院や通院費用の自己負担軽減のため犯罪被害者等給付金(重傷病給付金)の申請について教示した。
警察では、被害者の経済的負担を軽減するため、各種公費負担制度を運用しています。制度を知らないことによる自己負担が生じないよう、被害者やその家族に対して制度教示を行うことは重要であり、様々な場を通じて、関係職員に対する教育訓練を徹底しています。

関係職員への教育訓練
⑦ 関係機関・団体との連携
被害者が公判への参加を要望したため、被害者の同意を得て、犯罪被害者等早期援助団体(注)に対し、犯罪被害の概要に関する情報の提供を行い、被害者への付添いを依頼した。
注:102頁参照
被害者のニーズは、生活上の支援をはじめ、医療や公判に関することなど、極めて多岐にわたります。よりきめ細かな支援を行うため、犯罪被害者等早期援助団体や地方公共団体の職員と連携を図りながら、犯罪被害者のニーズに対応した支援活動の推進に努めています。

早期援助団体における相談対応