第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第1節 犯罪情勢とその対策

我が国の犯罪情勢を測る指標のうち、刑法犯認知件数の総数については、令和3年(2021年)は56万8,104件となり、前年に引き続き戦後最少を更新した。前年比では7.5%減少しているが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まった令和2年と比べると、減少幅は小さくなっている(令和2年は、前年比で17.9%の減少であった。)。

認知件数減少の内訳をみると、官民一体となった総合的な犯罪対策の推進や防犯機器の普及、その他の様々な社会情勢の変化を背景に、総数に占める割合の大きい街頭犯罪及び侵入犯罪については、平成15年(2003年)以降一貫して減少している。また、罪種でみると、総数に占める割合の大きい窃盗犯及び器物損壊等については、平成15年以降一貫して減少している(平成14年からの減少率は83.0%となっている。)。

刑法犯認知件数の総数が減少する一方で、特殊詐欺については、令和元年6月の犯罪対策閣僚会議において決定された「オレオレ詐欺等対策プラン」に基づき各種対策を推進しており、平成30年以降、認知件数・被害総額共に減少してきたところ、令和3年中の被害額は前年比で減少したものの、認知件数は4年ぶりに増加(注1)に転じたほか、犯行手口の傾向が変化しているところであり、厳しい状況が続いている。

刑法犯認知件数以外の指標についてみると、サイバー犯罪(注2)の検挙件数が高い水準で推移するとともに、警察庁が検知したサイバー空間における探索行為等とみられるアクセスの件数が増加傾向(注3)にある。このほか、SNSに起因する事犯の被害児童数が高い水準で推移(注4)するなど、サイバー空間を通じて他人と知り合うことなどを契機として犯罪被害に遭う事例もみられる。近年、サイバー空間が重要な社会経済活動を営む重要かつ公共性の高い場へと変貌を遂げつつある中、国内外で様々なサイバー事案が発生している(注5)ことも踏まえると、サイバー空間における脅威は極めて深刻な情勢が続いている。

ストーカー事案については、相談等件数が前年比では減少したものの、検挙件数が増加し、また、配偶者からの暴力事案等については、検挙件数が前年比で減少したものの、相談等件数は増加しており、いずれの指標も引き続き高い水準(注6)にある。また、児童虐待については、通告児童数、検挙件数共に増加傾向(注7)にある。これらの指標は必ずしも発生状況自体を示すものではないもののストーカー事案、配偶者からの暴力事案等及び児童虐待の情勢について引き続き注視すべきものといえる。

以上のとおり、様々な社会情勢を背景として、近年の犯罪情勢は、総数に占める割合の大きい罪種・手口を中心に刑法犯認知件数の総数が継続的に減少しているものの、一部罪種については増加傾向にあるほか、必ずしもこうした指標では捉えられない情勢もあり、依然として厳しい状況にある。

注1:61頁参照

注2:108頁参照(第3章)

注3:117頁参照(第3章)

注4:59頁参照

注5:108頁参照(第3章)

注6:51頁参照

注7:52頁参照

1 刑法犯

(1)刑法犯の認知・検挙状況

刑法犯の認知・検挙状況の推移は、図表2-1のとおりである。

 
図表2-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和24年(1949年)~令和3年)
図表2-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和24年(1949年)~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら

(2)刑法犯による身体的被害の状況

刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移は、図表2-2のとおりである。平成15年以降、いずれの数も減少傾向にある。

 
図表2-2 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成24年~令和3年)
図表2-2 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら

(3)重要犯罪(注)の認知・検挙状況

重要犯罪の認知・検挙状況の推移は、図表2-3のとおりである。令和3年中の重要犯罪の認知件数は、ピーク時である平成15年の2万3,971件と比べ1万5,150件(63.2%)減少した。検挙率は、平成25年以降は上昇傾向にあり、令和3年は93.4%であった。

注:殺人、強盗、強制性交等、強制わいせつ、放火、略取誘拐及び人身売買

 
図表2-3 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-3 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
① 殺人

殺人の認知・検挙状況の推移は、図表2-4のとおりである。

 
図表2-4 殺人の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-4 殺人の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
 
図表2-5 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和3年)
図表2-5 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
 
図表2-6 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和3年)
図表2-6 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
② 強盗

強盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-7のとおりである。

 
図表2-7 強盗の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-7 強盗の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
 
図表2-8  強盗の手口別認知状況(令和3年)
図表2-8  強盗の手口別認知状況(令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
 
図表2-9 侵入強盗の手口別認知状況(令和3年)
図表2-9 侵入強盗の手口別認知状況(令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
③ 強制性交等・強制わいせつ

強制性交等の認知・検挙状況の推移は、図表2-10のとおりである。

また、強制わいせつの認知・検挙状況の推移は、図表2-11のとおりである。

 
図表2-10 強制性交等の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-10 強制性交等の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
 
図表2-11 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-11 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
④ 放火

放火の認知・検挙状況の推移は、図表2-12のとおりである。

 
図表2-12 放火の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-12 放火の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら
⑤ 略取誘拐・人身売買

略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移は、図表2-13のとおりである。略取誘拐・人身売買の認知件数を被害者の男女別でみると、女性が被害者である割合は、令和3年は82.8%であった。

 
図表2-13 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
図表2-13 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成24年~令和3年)
Excel形式のファイルはこちら、CSV形式のファイルはこちら


前の項目に戻る     次の項目に進む