公安委員の声
警察官が幸せであれば、治安が良くなる
滋賀県公安委員会委員
大塚 良彦(おおつか よしひこ)
委員就任 平成27年7月26日
公安委員となり6年目を迎え、その間の公安委員の活動を通じて感じたこと、考えたことを述べさせていただきたいと思います。
そもそも都道府県の公安委員会制度は、戦後、警察の民主的運営と政治的中立性を確保するため、都道府県知事の所轄下に、市民の代表者によって構成される合議体の機関である都道府県公安委員会を設置し、これに警察の管理を委ねることとなったものです。我が国では一方に偏ることなく、本当によくできた民主的な仕組みだと思います。
公安委員会の役割は、その所掌事務について大綱方針を定め、これに即して警察事務の運営を行わせるために、都道府県警察を監督し、都道府県警察における事務の処理が大綱方針に適合していないと認めるときは、必要な指示を行うことです。では、管理者として具体的に何をするのでしょうか。私は、26年間会社を経営していますが、社員が自立的に仕事をしてくれることに注力してきました。そこから、警察組織を活性化すること、すなわち警察官が生き生きと仕事をする状態を保つことが重要だと思い至りました。そのためには、まず、現場を知らなければならないと、令和3年も運営指針の重点項目に視察・督励活動の積極的・計画的な推進を挙げていました。
この結果、滋賀県警察は、行政組織にありがちな前例踏襲や新しい企画に対し、できない理由を並べたてることのない「進取の精神に富んだ文化」を持ち、失敗を恐れず、失敗の先に成功があるというアグレッシブで前向きな考え方ができていると感じています。
次に非違事案についてです。民間企業で、不正を起こしやすい組織は、①風通しの悪い、上意下達の組織、②業績至上主義の組織、③社員の同質性の高い組織、④隠蔽体質の組織であるといわれています。これを滋賀県警察に当てはめてみますと、該当するのは③の同質性くらいで、特に④に関しては、ディスクロージャーは末端まで浸透していて、つくづく正直者の集まりだと感じています。したがって、我々公安委員は、アコヤ貝に異物が入って真珠ができるように、警察の中にあって目的を同じくする異物となることを心がけています。
イソップ童話の「ウサギとカメ」は、油断してはならない逸話として伝えられていますが、実はもう一つ意味があります。ウサギがカメに負けた理由として、それぞれ何を見ていたのかということです。ウサギはカメを見ていました。カメはゴールしか見ていませんでした。すなわち、見ているものが違ったのです。我々公安委員は、近代警察の父といわれる川路利良が警察手眼の警察要旨の項で示した、「行政警察は、国民を罪におとさないよう予防が第一だ」というゴールを目指して、滋賀県警の皆さんと気持ちを同じくしながら、あらゆる提言を行っています。
今年度一番力を入れているのが、警察業務へのDX(デジタルトランスフォーメーション)の更なる活用の提言です。世界はデジタル社会へ大変なスピードで移行していて、AIの進化は目を見張るものがあります。DXの本質は仕事のやり方を変えることであり、これは省力化にもつながり、働き方改革に資するものです。具体的には現在、大学と提携しており、そのデータ分析から効率的に犯罪の事前察知や交通事故の未然防止につなげることに取り組んでいますが、その加速を支援すべく、民間ならではの枠にとらわれない発想で提言を行ってまいりたいと考えています。
