トピックスII 自転車の交通ルールとその徹底に向けた警察の取組
(1)自転車関連交通事故の現状
自転車は、極めて身近な交通手段であり、環境負荷の低減、災害時における交通機能の維持、国民の健康増進等にも資するものであると認識されている。また、昨今では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた国民の交通手段やライフスタイルの変化に伴い、通勤・通学や配達を目的とする自転車利用のニーズが高まっている。
近年、自転車関連の死亡・重傷事故件数は減少傾向にあるものの、令和2年(2020年)中に発生したもののうち、約7割は自転車側に何らかの法令違反がみられる。
令和2年中の自転車対歩行者の事故のうち、歩行者の死亡・重傷事故の43.5%は、歩道上で発生している。また、同年中の自転車関連の死亡・重傷事故を相手当事者別でみると、自転車対自動車の事故が75.0%を占めており、同事故を類型別でみると、出会い頭衝突が54.6%と最も多くなっている。さらに、自転車対自動車の出会い頭衝突による死亡・重傷事故を法令違反別にみると、安全運転義務違反のほか、信号無視や一時不停止の違反が多く認められる。

(2)自転車の交通ルールと運転時の心構え
道路交通法上、自転車は「軽車両」であり、「車両」の一種であるため、歩道と車道が分離されている場合には、原則として、車道を通行しなければならず、普通自転車(注1)は、車道に「普通自転車専用通行帯」(注2)や「自転車道」(注3)が設けられている場合には、それらを通行しなければならない。
例外として、「普通自転車歩道通行可」を示す標識や標示が設けられている場合や、13歳未満の子供や70歳以上の高齢者が運転している場合等には、歩道を通行することができる。ただし、歩道を通行する際には、歩道の車道寄りの部分(普通自転車通行指定部分(注4)がある場合は、その部分)を通らなければならず、歩行者を優先するとともに、原則として、すぐに停止できるような速度で徐行しなければならない。
自転車乗用中の交通事故類型としては出会い頭衝突が多く発生している。「車両」の一種である自転車も信号に従わなければならず、また、一時停止の標識がある場所では、停止線の直前で一時停止しなければならない。
注1:他の車両を牽(けん)引しておらず、大きさ等が一定の基準を満たす自転車
注2:交通規制により指定された普通自転車専用の車両通行帯
注3:縁石線や柵等の工作物によって分離された自転車専用の走行空間
注4:歩道の白線と自転車の記号の標示によって指定された部分

「普通自転車専用通行帯」の標識と道路標示

「普通自転車歩道通行可」を示す標識

普通自転車通行指定部分
(3)交通ルールの徹底に向けた警察の取組
① 自転車利用者に対する交通ルール等の周知徹底
警察では、地方公共団体、学校、自転車関係事業者等と連携し、「自転車安全利用五則」(注)を活用するなどして、全ての年齢層の自転車利用者に対して、交通ルール等の周知を図っている。
また、ルールを守らなかった場合の罰則や交通事故発生の危険性等を周知するとともに、ヘルメットの着用や幼児を自転車に乗車させる場合のシートベルトの着用、点検整備、損害賠償責任保険等への加入の促進を図っている。
さらに、配達を目的とする自転車利用のニーズが高まっていることから、自転車を用いた配達業務中の交通事故を防止するため、関係事業者等に対する交通安全対策の働き掛け、街頭における配達員への指導啓発、飲食店等を通じた配達員への交通ルール遵守の呼び掛け等を推進している。
注:「自転車は、車道が原則、歩道は例外」、「車道は左側を通行」、「歩道は歩行者優先で車道寄りを徐行」、「安全ルールを守る(飲酒運転・二人乗り・並進の禁止、夜間はライトを点灯及び交差点での信号遵守と一時停止・安全確認)」及び「子供はヘルメットを着用」

広報啓発リーフレット
MEMO ヘルメット着用の重要性
平成28年から令和2年までの期間における自転車乗用中死者を損傷主部位(注1)別でみると、頭部に損傷を受け、それが致命傷となったものが約6割と最も高くなっている。また、ヘルメットを着用していなかった場合の致死率(注2)は、着用していた場合と比べて約2.4倍高くなっている。
警察では、自転車乗用中の頭部保護の重要性とヘルメット着用による被害軽減効果についての広報啓発に努めるとともに、全ての年齢層の自転車利用者に対して、ヘルメットの着用を推奨している。
注1:損傷程度が最も重い部位(死者については致命傷の部位)
注2:死傷者に占める死者の割合

② 自転車安全教育の推進
警察では、関係機関・団体等と連携して、児童・生徒や高齢者等に対する自転車安全教育を推進している。令和2年中、児童・生徒や高齢者等を対象に、自転車シミュレーターを活用するなどした参加・体験・実践型等の自転車教室を開催したほか、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、動画を活用した学習機会の提供、ウェブサイトやSNS等の各種媒体の積極的活用等、対面によらない交通安全教育や広報啓発活動も推進した。
③ 自転車利用者に対する指導取締りの推進
自転車の交通ルールを徹底するためには、ルールそのものの周知等のみならず、ルールを守らない者に対する指導取締りを行い、両者を両輪として推進していくことが重要である。
警察では、自転車指導啓発重点地区・路線(注)を中心に、自転車利用者の信号無視、一時不停止等に対し、指導警告を行うとともに、悪質・危険な交通違反に対しては検挙措置を講じるなど、厳正に対処している。また、指導取締りの機会を活用した「自転車安全利用五則」の周知にも努めている。
このほか、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為を反復して行った自転車の運転者を対象とする自転車運転者講習を実施しており、令和2年中は515人が受講した。
注:自転車が関係する交通事故の発生状況、地域住民の苦情・要望等を踏まえ、全国1,896か所(令和2年末現在)を指定
