警察活動の最前線

警察活動の最前線

被災地に勤務して


前 福島県双葉警察署復興支援課復興支援係

(現 福島県警察本部警備部災害対策課災害対策第一係)

高橋 亜麿(たかはし あろう)

 
福ぼうしくん福ぼうしさん

東日本大震災から10年の節目を迎えた現在、私は、東京電力福島第一原子力発電所から約9kmに位置する双葉警察署復興支援課で勤務しています。

福島県内では、津波の影響で未だ多くの方が行方不明となっているほか、福島第一原子力発電所事故の影響で、当署管轄区域の約35%が帰還困難区域に指定され、現在も人の居住や車両の往来等が制限されています。

さらに、管内の帰還困難区域内には、人の立入りが出来ないために、震災当時から手付かずの状態で劣化した建物が数多く存在しており、震災の爪痕が未だ色濃く残っています。

その一方で、避難指示が解除された区域では、JR常磐線の全線再開や常磐自動車道の整備、ライフラインの復旧といった復興事業の進展に伴い、帰還する住民の方々も増え、町並みも日々変化しているなど、着実な復興が進んでいます。

現在、私達は、「ウルトラ警察隊」の愛称で知られる全国警察の特別出向部隊と共に、犯罪の抑止や交通事故防止等に向けた街頭活動のほか、震災によって未だに行方不明となっている方々の捜索、管内外に避難されている住民の方々への訪問等、被災者に寄り添った活動を心掛け、被災地域等の安全と安心の確保に努めています。

これまでの活動を通じて、住民の方々からは、「わざわざ、遠くの避難先までお巡りさんが訪問してくれてありがとうございます。」「たまに空き家となった自宅へ帰りますが、投函されたパトロールカードを見て安心しました。」「知り合いが行方不明のままですので、これからも捜索を頑張って続けて下さい。」といった感謝や激励の言葉が寄せられました。

私達は、避難生活を余儀なくされ、辛い経験をしているにもかかわらず笑顔で言葉を掛けてくれる住民の方々から勇気付けられることが数多くあります。

心温かい住民の方々に感謝をしながら、被災地域の安全と安心を守るためのパトロールや訪問等の諸活動を展開し、福島県の復興を治安面から力強く支えていきたいと思います。

 
前 福島県双葉警察署復興支援課復興支援係(現 福島県警察本部警備部災害対策課災害対策第一係) 高橋 亜麿1
 
前 福島県双葉警察署復興支援課復興支援係(現 福島県警察本部警備部災害対策課災害対策第一係) 高橋 亜麿2

産業制御システムのサイバー攻撃対策


前 警察庁情報通信局情報技術解析課

サイバーテロ対策技術室情報分析係

(現 警察庁情報通信局情報管理課)

三谷 貴彦(みたに たかひこ)

 
警察庁ワッペン

私の係では産業制御システムのサイバーセキュリティ対策に取り組んでいます。産業制御システムとは、工場や発電所などで使われる産業用機械・設備を制御するシステムであり、電力、水道といった社会のインフラを支えているため、サイバー攻撃により異常が発生すると国民生活に大きな影響を与える可能性があります。実際、海外においては、産業制御システムに対するサイバー攻撃がたびたび発生しており、深刻な脅威となっています。

私が着任した令和2年度に、海外で産業制御システムに対するサイバー攻撃に使われたとされる不正プログラムが入手されたため、当該プログラムの動作検証を行いました。この検証結果は捜査部門に提供し、重要インフラ事業者等への注意喚起のために有用な情報として活用してもらうことができました。

産業制御システムに対するサイバー攻撃については、一般的な情報システムに比べ技術情報が少ないことに加え、特定の産業用機械等のみを狙い、他の産業用機械等においては攻撃が再現できないものもあるなど、調査や検証には多大な労力を要します。こうした中でも、効果的に事業者等に注意喚起を実施し、実際に国内で産業制御システムを狙ったサイバー攻撃が発生した際に迅速に対応できるようにするため、常日頃から着実に最新情報を収集し、検証を重ね、知見を蓄積しています。

 
前 警察庁情報通信局情報技術解析課サイバーテロ対策技術室情報分析係(現 警察庁情報通信局情報管理課) 三谷 貴彦

中小企業のサイバー攻撃対策


前 北海道警察情報通信部情報技術解析課

支援分析第一係

(現 北海道警察本部に出向中)

鶴田 光慶(つるた みつよし)

 
警察庁ワッペン

サイバー攻撃は以前よりも身近な問題になっています。情報セキュリティ対策は大企業などでは進んでいますが、中小企業ではまだまだ対策できていない会社がたくさんあります。さらに、テレワークを行う機会の増加により、テレワークのため情報セキュリティ対策もしなければならず差し迫った問題でもあります。中小企業では、機材を導入できても会社の中のルールが細かく規定されていない場合や、情報セキュリティに詳しい人が会社の中にあまりいないという場合も多く、対策の最適解を相談できる人材が少ない場合も多いと思います。私は、まず決めたルールが実際に機能するかという訓練をすることを勧めています。そして、訓練で出た問題点について警察が助言することによって良い対策ができると思っています。これは自然災害に対する訓練である防災訓練と何も変わらないことであり、サイバー攻撃はネットワーク技術やセキュリティに詳しい人だけの問題ではなく、一般の人が巻き込まれたときにしっかりと機能する社内ルールが必要だということです。もはや、サイバー攻撃は自然災害や交通事故と同じくらい、誰もが被害者になってしまう可能性があるものです。今後も持てる知見を最大限に活用し、サイバー攻撃被害の減少に向けて貢献していきたいと思います。

 
前 北海道警察情報通信部情報技術解析課支援分析第一係(現 北海道警察本部に出向中) 鶴田 光慶

「コロナ禍に対応した新たな犯罪抑止対策」

前 神奈川県警察本部生活安全部

生活安全総務課犯罪抑止対策室

(現 神奈川県庁に出向中)

吉川 裕介(よしかわ ゆうすけ)

 
ピーガルくん

新型コロナウイルス感染症は、社会環境を大きく変化させ、県内でも不安や混乱に乗じた様々な犯罪が発生しました。

「コロナ」をキーワードにした特殊詐欺や、閉店時間帯の店舗を狙った窃盗、更には、休校に伴う留守番中の子供の安全対策に取り組む必要があり、警察においても新たな犯罪抑止対策が求められることになりました。

しかし、コロナ禍では、防犯イベント等の従来の対面型・接触型の広報啓発活動が制限されました。そこで、アイデアを出し合い、新しい生活様式に対応した、新たなアプローチを考えました。例えば、著名な実演販売士等の発信力の高い方々に協力をいただき、迷惑電話防止機能付き電話機を紹介する動画を配信するなど、効果的に動画サイトやSNSを活用した情報発信に取り組みました。他にもデリバリー事業者など、県民と対面で接する事業者に防犯チラシの配布等をお願いし、感染拡大防止に最大限配意しながら、県民の耳目を集める、創意工夫を凝らした広報啓発活動を展開しました。

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、犯罪情勢を含め、社会環境は日々変わっていくことから、今後も変化の兆しを鋭敏に捉え、時勢に応じた斬新かつ先制的な犯罪抑止対策を講じてまいります。

 
前 神奈川県警察本部生活安全部生活安全総務課犯罪抑止対策室(現 神奈川県庁に出向中) 吉川 裕介
 
神奈川県警察防犯チャンネル【公式】
神奈川県警察防犯チャンネル【公式】

特殊詐欺事犯の根絶に向けて

前 群馬県警察本部刑事部組織犯罪対策課

特殊詐欺組織解明係

(現 群馬県伊勢崎警察署刑事第二課長)

栁岡 圭(やなおか けい)

 
上州くん

某県繁華街にあるビジネスホテルの一室での出来事でした。

特殊詐欺事件の首領被疑者である準暴力団等のリーダーが潜伏しているとの情報を得て、我々捜査員は、エレベーター脇で息を潜めていました。

長時間の張り込みの末、突如室内から現れたリーダーに捜査員が一斉に駆け寄り、身柄を確保しました。

この事件は、特殊詐欺受け子被疑者の突き上げ捜査により犯罪集団である準暴力団等の実態を解明し、組織的な捜査を展開した結果、集団の首領検挙に至ったものでした。

明確な組織性がない準暴力団等は、メンバーの離合集散が激しく実態把握が困難ですが、組織犯罪対策課が本件捜査に携わり、部門の垣根を越えた迅速な情報収集、分析等を行ったことが功を奏し、事件解決へ結び付きました。

また、他県警と盤石な協力体制を築き、お互いが保有する情報をタイムリーに共有し合ったこと、さらには受け子被疑者の自供を得たことが決め手となり、集団とその後ろ盾となっていた暴力団組員との結節点を浮き彫りにしました。

私は、今回の事件捜査を通じて、犯罪組織の首領を検挙し社会から長期隔離を図ることが組織の壊滅には最も効果的であると実感しました。

特殊詐欺は、高齢者等の貯蓄を奪う極めて悪質な犯罪です。

今後も、組織総合力を発揮し、特殊詐欺事犯の根絶に向け、全力で捜査に取り組んで行きたいと思います。

 
前 群馬県警察本部刑事部組織犯罪対策課特殊詐欺組織解明係(現 群馬県伊勢崎警察署刑事第二課長) 栁岡 圭

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



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