特集4 クロスボウの規制に向けた警察の取組

特集4 クロスボウの規制に向けた警察の取組

1 クロスボウが使用された事件の発生と警察への相談

(1)殺人事件等の発生

令和2年(2020年)6月、無職の男(23)が、兵庫県宝塚市内の自宅において、殺意をもって、親族4人の頭や首にクロスボウで矢を発射し、うち3人が死亡し、1人が重傷を負う事件が発生した。また、この事件の発生後も、クロスボウが使用された殺人未遂事件等が相次いで発生した。

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無職の女(33)は、令和2年7月、自宅において、殺意をもって、同女の夫に対してクロスボウで矢を発射した上、同人を包丁で突き刺し、傷害を負わせた。同日、同女を殺人未遂罪で現行犯逮捕した(兵庫)。

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無職の女(28)は、令和2年8月、自宅敷地内において、同所を訪れた民生委員に対し、殺意をもってクロスボウで矢を発射し、傷害を負わせた。同年9月、同女を殺人未遂罪で逮捕した(長野)。

(2)クロスボウが使用された事件の検挙状況

クロスボウの所持については法律上規制されておらず、警察では、クロスボウを使用して人を殺傷する事件等が発生した場合に刑法等を適用して検挙している。

クロスボウが使用された刑法犯の検挙件数は、平成22年(2010年)から令和2年までの間で27件あり、このうち殺人(4件)、殺人未遂(6件)等の故意に人の生命又は身体を害する罪に当たる事件が16件と半数以上を占めている。このほか、特別法犯の検挙件数は10件となっている。

 
図表特4-1 クロスボウが使用された事件の検挙件数(平成22年~令和2年の合計)
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無職の男(23)らは、平成26年5月、殺意をもって、知人を橋の欄干に立たせ、同人に対してクロスボウで矢を発射した上、川に転落させ、傷害を負わせた。平成27年10月、同男らを殺人未遂罪等で逮捕した(福岡)。

(3)クロスボウが犯罪に使用される背景

平成22年から令和2年までの間に検挙した、クロスボウが使用された事件37件の詳細について分析したところ、詳細が判明した事件においては、被疑者の多くがインターネットを介してクロスボウを入手していた。

また、被疑者のクロスボウの入手動機は、犯罪目的、興味本位、鑑賞目的等様々であったが、クロスボウを犯罪に使用するに至った経緯としては、①当初から犯罪目的でクロスボウを入手した事例のほか、②入手当初は鑑賞等犯罪以外の目的でクロスボウを所持していたが、何らかのきっかけで犯罪に使用した事例、③クロスボウを試し撃ちしているうちに、標的が動物に変わっていった事例があった。

(4)クロスボウに関する警察への相談の状況

平成22年から令和2年までの間のクロスボウに関する警察への相談の件数は172件であり、クロスボウの所持者への不安の声、民家等への実害、脅迫等の被害の声、「動物が撃たれている」との声等が寄せられている。

 
図表特4-2 クロスボウに関する警察への相談の状況(平成22年~令和2年の合計)
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