第6章 警察活動の支え

第3節 国際的な警察活動

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

①ASEAN加盟国、G7各国等との連携

警察では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野において、ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注)、G7内務大臣会合等の会議に出席するなどして、外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。

また、平成30年(2018年)12月に警察庁とEUROPOLとの間において策定した協力関係構築に係る実務取決めに基づき、EUROPOLへの連絡担当官を派遣しており、EUROPOLに加え、EU加盟国や連絡担当官を派遣している他の国との二国間協力の強化を図っている。

注:ASEAN加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議

②二国間等の連携

警察では、日越治安当局次官級協議、日中韓警察局長級会議等を開催しているほか、国家公安委員会委員長が各国の治安担当大臣等と会談を行うなど、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関等との間で協力関係を深めている。

(2)治安に関係する国際約束の締結

刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期すとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。このほか、米国との間では、日米査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたPCSC協定(注)を締結している。

注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称

(3)国際協力の推進

①海外の警察に対する支援

警察庁では、我が国の警察の知見や特質を生かせる分野において、外務省やJICAと協力し、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた海外の警察に対する支援を行っている。令和2年(2020年)中には、3人の専門家を新たに派遣した。

ア インドネシア国家警察改革支援プログラム

平成13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。平成24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。

MEMO 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた取組

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、インドネシア国家警察改革支援プログラムのために派遣されていた専門家も一時帰国し、現地で活動ができない状況にあった。こうした中でも、インドネシアの警察大学院大学の学生に対するオンラインによる講義、新型コロナウイルス感染症対策資機材の供与に向けた調整、同国における鑑識活動の好事例に関する資料の作成及び配布等、創意工夫を凝らした取組を進めた。

 
ジャカルタ警視庁への資機材の供与の様子
ジャカルタ警視庁への資機材の供与の様子
イ 研修員の受入れ

警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。令和2年中には、4回の研修でインドネシア、東ティモール等各国の警察幹部を含む45人の研修員を受け入れた。

 
宮崎県警察での東ティモール警察官への研修の様子
宮崎県警察での東ティモール警察官への研修の様子
②国際緊急援助活動

我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ290人の隊員を延べ16の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。

(4)国際的な警察活動に関する基盤整備

警察では、警察大学校国際警察センターにおいて、言語別の語学研修や国際捜査、国際協力に関する研修を実施することなどにより、通訳人となる警察職員や国際捜査、国際協力に知見を有する警察職員を育成しているほか、各都道府県警察においても、民間の通訳人の確保や外国の文化、宗教等に関する理解を促進するための研修に積極的に取り組むなどして、国際的な警察活動に関する基盤整備を推進している。

 
島根県警察での通訳人への研修の様子
島根県警察での通訳人への研修の様子

MEMO 「伝える意志」(静岡県警察本部警務部教養課 宮澤和正警部補)

私は、静岡県警察で通訳人として英語の通訳業務に従事しています。

英語といっても、国籍・地域で発音や語彙が大きく異なっているほか、国によって風習や文化、司法制度の違いがあります。取調べ等の通訳に従事する度に、そのような違いを肌で感じており、ベストの通訳が一つでないことを意識して、毎回、新たな気持ちで臨むようにしています。

また、日本語を解さない外国人からの相談等に適切に対応できるよう、地域警察官等の職員に対し研修を行っています。外国語が苦手なために外国人への応対が消極的にならないように、イラストを差し示すことで意思疎通を図るコミュニケーションツールや多言語翻訳機能を有する装備資機材等を活用したロールプレイング訓練を行い、警察職員が自分の意思を外国語で相手にはっきりと伝えることができるようになるよう努めています。

 
静岡県警察本部警務部教養課 宮澤和正警部補


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