第5章 公安の維持と災害対策

5 大衆運動への警察の対応

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講じるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講じることとしている。

(1)近年の大衆運動

近年の大衆運動では、平成23年の福島第一原子力発電所事故を契機に、反原発運動が幅広い年齢層の多数の市民が参加する運動へと発展し、また、平成27年には、平和安全法制等に反対する運動に諸団体が連携して取り組む抗議行動が行われるようになった。

こうした中で、国会議事堂周辺等において、毎週金曜日には、反原発を訴える抗議行動が、毎月19日には、諸団体が連携してその時々の政治課題を捉えた抗議行動が、それぞれ継続して行われてきたが、令和2年中は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、これらの抗議行動をはじめ、様々な集会・デモが中止又は規模を縮小して開催された。

 
動画投稿サイトに配信して開催される 憲法改正に対する抗議行動(毎日新聞社/アフロ)
動画投稿サイトに配信して開催される
憲法改正に対する抗議行動(毎日新聞社/アフロ)

(2)沖縄県内の反基地運動

沖縄県では、普天間飛行場の危険の除去と返還に向けて名護市辺野古への移設工事が進められているが、これに反対する諸団体等が、移設先であるキャンプ・シュワブや埋立用の資材を搬出する港の周辺等において、工事関係車両への立ち塞がり、道路での座込みといった危険な妨害活動を繰り返している。

警察では、令和2年中、同県内のこうした反基地運動に伴い、警備に当たる警察官に暴行を加えた公務執行妨害罪等で6件、延べ13人を検挙した。

 
移設工事に対する抗議行動(共同通信社)
移設工事に対する抗議行動(共同通信社)

(3)反グローバリズム運動

近年、経済のグローバル化が貧富の差の拡大や環境破壊といった社会問題を発生させているなどとする考え方に基づき、国際会議や国際機関等に対して抗議行動を行う反グローバリズム運動が国際的に展開されている。

国内の反グローバリズムを掲げる勢力は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降、海外の同勢力が経済のグローバル化に反対して取り組んだインターネット上の署名活動に賛同したり、討論会に参加したりするなどし、国際的な連携の維持・強化を図った。

また、令和3年に開催が延期された2020年東京大会について、中止を求めて集会やデモ等の抗議行動を行った。

 
2020年東京大会に対する抗議行動(ロイター/アフロ)
2020年東京大会に対する抗議行動(ロイター/アフロ)


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