第5章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向と対策

右翼は、領土問題、歴史認識問題等に関し、関係国や日本政府等を批判している。

令和2年中、中国をめぐっては、4月に予定されていた習近平国家主席の国賓来日及び新型コロナウイルス感染症の感染拡大を捉えた抗議活動を行った。韓国をめぐっては、慰安婦問題や竹島問題を捉えた抗議活動を行った。ロシアをめぐっては、ロシアの憲法改正案に領土の譲渡に向けられた行為等の禁止が盛り込まれたことを捉え、北朝鮮をめぐっては、弾道ミサイルが繰り返し発射されたことを捉え、それぞれ抗議活動を行った。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表5-7のとおりである。

 
右翼の街頭宣伝活動(1月、静岡)
右翼の街頭宣伝活動(1月、静岡)
 
図表5-7 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和2年)
図表5-7 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(令和2年)

CASE

右翼活動家の男(49)は、令和2年7月、国会議事堂周辺において、街頭宣伝車で政府の新型コロナウイルス感染症への対応等を批判する抗議活動中、警戒中の警察官に移動するよう警告されたことに憤慨し、街頭宣伝車の運転席ドアをいきなり開け、同警察官に同ドアをぶつける暴行を加えたことから、同男を公務執行妨害罪で現行犯逮捕した(警視庁)。

警察では、右翼による悪質な違法行為に対し、様々な法令を適用した取締りを行っており、令和2年中、右翼運動に伴う事件(注)の検挙件数は62件、検挙人員は85人であった。

右翼団体の中には、幹部の多くが暴力団員又は元暴力団員であるものや、暴力団が右翼団体を標榜しているものなどもあり、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件等の違法行為を引き起こしているが、このような恐喝事件や詐欺事件等の検挙件数は40件、検挙人員は42人であった。

また、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態に応じた取締りを行っており、令和2年中は、威力業務妨害罪等で12件22人を検挙した。

さらに、警察では、右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めた結果、令和2年中、拳銃3丁(前年同期:3丁)を押収した。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、東京)
街頭宣伝活動に対する取締り状況(8月、東京)

CASE

右翼団体代表の男(45)は、資金獲得目的で、実父が当事者の交通事故による保険金収入を得ていたにもかかわらず、これを福祉事務所に届け出ず、生活保護法に基づく生活扶助等の名目で現金をだまし取ったことから、令和2年9月、同男を詐欺罪で逮捕した(警視庁)。

CASE

右翼団体構成員の男(47)ら8人は、令和2年1月、沖縄県内において、県議会議員の事務所に街頭宣伝車を乗り付け、同車両に装備された拡声機を用いて、繰り返し大音量で怒号し、同事務所の業務を妨害するとともに、対応した者に、「殺すぞ」などと怒号を発して、同人の生命、身体等に危害を加えるような威勢を示し、団体の威力を示して脅迫した。同年7月までに、威力業務妨害罪及び暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で同男らを検挙した(沖縄)。

(2)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

令和2年中、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国において約10件のデモが行われた。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力が、参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

警察では、平成28年に施行された本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律を踏まえ、引き続き、右派系市民グループとその活動に対して抗議する勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

 
右派系市民グループのデモ(6月、東京)
右派系市民グループのデモ(6月、東京)


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