第5章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指す極左暴力集団は、依然として「テロ、ゲリラ」の実行部隊である非公然組織を擁するとともに、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んでいる。

令和2年中、極左暴力集団は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う政府の対策に対し、「コロナ危機を利用した憲法改悪反対」、「大学の学費を無償化しろ」などと主張し、抗議活動を行った。また、反戦・反基地運動や反原発運動に取り組み、これらを通じて同調者や支持者の獲得を図った。

革マル派(注1)は、令和2年9月から、同派創始者である故黒田寛一前議長の哲学と思想をまとめた著作集全40巻の刊行を開始し、同書を活用した学習を機関紙で呼び掛けるなど、故黒田前議長が提唱した理論の継承に引き続き取り組んだ。また、同派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、同年2月にJR東労組の一部組合員が脱退して新労組を結成する動きがあったものの、同年6月の定期大会において、引き続き、同派設立時の副議長であった故松嵜明元JR東労組会長が提唱した労働運動理論に基づき組合活動を進めていく方針を決定した。

中核派(注2)は、同年9月、2年ぶりに革共同政治集会を開催した。同集会では、清水丈夫議長が約半世紀ぶりに公の場に姿を現し、「旧政治局の誤りが深刻な党的危機と混乱をもたらした。その責任は私にある」などと、平成27年以降の指導が誤りであったことを認める発言をした。また、秋月丈志書記長は、引き続き、「非合法・非公然の党の建設を推進しよう」と訴えた。このほか、同派は、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を堅持し、引き続き労働運動や大衆運動に介入する中で勧誘活動に取り組んだ。

革労協主流派(注3)及び革労協反主流派(注4)は、令和2年の年頭の機関紙において、非公然組織「革命軍」のアピール文をそれぞれ発し、「武装闘争の飛躍」を主張した。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

注2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

注3:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。

注4:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
「11.1全国労働者総決起集会」(11月、東京)
「11.1全国労働者総決起集会」(11月、東京)

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団による「テロ、ゲリラ」を未然に防止するための諸対策を推進しており、その過程で明らかになった違法行為は、厳正に取り締まっている。令和2年2月には、内容虚偽の国民健康保険被保険者証を使用して金融機関に口座開設を申し込み、同金融機関から通帳及びキャッシュカードをだまし取った革マル派活動家1人を詐欺罪で逮捕した(奈良、神奈川)。また、同年10月には、虚偽の申請により交付を受けた運転免許証を特別定額給付金の申請に使用するなどした中核派非公然活動家1人を免状不実記載・不実記載免状行使罪で逮捕した(警視庁)。



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