第5章 公安の維持と災害対策

第3節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する「Aleph(アレフ)」をはじめとする主流派と、松本の影響力がないかのように装う「ひかりの輪」を名のる上祐派が活動している。教団は、松本が確立した教義に基づいて、松本サリン事件、地下鉄サリン事件等の数々の凶悪事件を引き起こし、多くの犠牲者を出したが、依然として同人及び同人の説く教義を基盤としている。

このため、平成12年(2000年)2月以降、教団に対し、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法に基づき、公安調査庁長官の観察に付する処分が行われており、令和3年(2021年)1月には、教団の危険性が改めて認定され、7回目となる処分の期間更新決定(令和6年1月末まで)がなされた。

令和2年中、主流派は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、2月以降、大規模行事を中止するなどしたが、緊急事態宣言が解除された5月以降は、活動を徐々に活発化させ、勧誘活動も再開した。上祐派も、一部行事を中止するなどしたが、インターネットを活用するなどして活動を継続した。

(2)オウム真理教対策の推進

こうした教団に対し、警察では、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進している。令和2年2月には、公安調査庁の立入検査に際し、団体の活動状況を明らかにするために必要な検査対象物件の確認を受けず、パソコン1台を施設内で隠匿したとして、団体規制法違反(検査忌避)で上祐派出家信者1人を逮捕した(福岡)。

また、教団は、15都道府県に31か所の拠点施設を有しているが、拠点施設が所在する地域においては、教団の活動に対する不安感が強く、教団の進出に反対する地域住民が対策組織を結成している地域もある。警察では、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺における警戒警備活動を行うとともに、教団の現状や警察の取組について、地域住民や地方公共団体に向けた広報活動を行うことにより、安心感の醸成を図っている。

さらに、教団は、一連の凶悪事件を知らない若い世代を主な対象として、教団名を隠した勧誘活動を行っていることから、警察では、巧妙な勧誘活動の手口について、各種機会を通じ、学校等に対して広報している。

 
図表5-6 オウム真理教の拠点施設等(令和2年末現在)
図表5-6 オウム真理教の拠点施設等(令和2年末現在)


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