第5章 公安の維持と災害対策

2 経済安全保障等に関する取組

(1)経済安全保障に関する取組

我が国は、世界中で利用されている先端技術に関する情報や最先端の高性能製品を数多く有しており、これらの技術情報等の中には、使用方法によっては軍事用途に転用可能なものも含まれる。

各国がポストコロナの国際秩序の在り方を模索する動向を活発化している中、我が国の有する重要技術流出やいわゆる頭脳流出の危険性、サプライチェーンのぜい弱性といった我が国をめぐる経済安全保障上の脅威が一層顕在化しつつある。

警察では、警察庁に経済安全保障対策官を設置するなどの体制の強化を行い、こうした技術情報等の流出に係る情報の収集・分析に努めるとともに、違法行為に対して厳正な取締りを行っている(注)。また、経済安全保障に関する様々な情報の収集・分析を進め、検挙事例の具体的手口に係る情報等を政府のインテリジェンス・コミュニティや政策部門と共有するなど、関係機関と連携した取組を積極的に推進しており、これらの取組を一層強力に推進していくこととしている。

注:中国共産党員の男によるレンタルサーバ不正契約事件の検挙については20頁参照(特集2)

CASE

大手化学メーカーの元社員の男(45)は、平成30年8月から平成31年1月にかけて、勤務先の営業秘密であるタッチパネル等に使用される素材に関する技術情報を不正に領得するなどした上、SNSを介して接触してきた中国所在の企業の社員に開示した。令和2年10月、同人を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)で検挙した(大阪)。

(2)大量破壊兵器関連物資等の不正輸出対策

大量破壊兵器関連物資等の拡散は、我が国のみならず国際社会における安全保障上の重大な脅威となっていることから、警察では、我が国からの大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを徹底しており、令和2年12月までに、37件の大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を検挙している。その中には、軍用の化学兵器の製造や核・ミサイルの開発に用いられるおそれがある物資の不正輸出事件等も含まれている。これらの事件においては、第三国を経由した迂回輸出の実態や摘発逃れを目的とした輸出名義人の偽装等の悪質・巧妙な手口が確認されており、警察では、国内外の関係機関との緊密な連携等を通じて、情報の収集・分析及び違法行為に対する取締りを更に徹底することとしている。

また、PSI(注)に平成15年(2003)年の発足当初から参画するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、107か国(平成31年2月現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。



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