第3章 組織犯罪対策

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和2年(2020年)中の薬物事犯の検挙人員は1万4,079人と、引き続き高い水準にあり、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は社会の安全を脅かす重大な問題である。

 
図表3-8 薬物事犯の検挙人員(令和2年)
図表3-8 薬物事犯の検挙人員(令和2年)
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(1)犯罪組織等の動向

① 暴力団による薬物事犯

令和2年中の暴力団構成員等による薬物事犯の検挙人員は4,387人と、前年より189人(4.1%)減少した。このうち、覚醒剤事犯の検挙人員は3,577人と、前年より161人(4.3%)減少したものの、覚醒剤事犯の総検挙人員の42.2%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。また、暴力団構成員等による大麻事犯の検挙人員は751人と、総検挙人員の14.9%を占めており、前年より29人(3.7%)減少したものの、大麻栽培事犯の検挙人員は46人と前年より4人(9.5%)増加していることなどから、暴力団が大麻事犯への関与を強めていることがうかがわれる。

② 来日外国人による薬物事犯

令和2年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は525人と、前年より224人(29.9%)減少した。このうち、覚醒剤の営利目的輸入事犯の検挙人員は50人であり、国籍・地域別でみると、ベトナム及び香港の比率が高く、合わせて全体の48.0%を占めている。また、令和2年中の来日外国人による覚醒剤の密売関連事犯(注)の検挙人員は18人と、前年より15人(45.5%)減少した。国籍・地域別でみると、ベトナム及びブラジルの比率が高く、合わせて全体の55.6%を占めている。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け

CASE

イスラエル人の男(58)らは、令和2年9月、南アフリカ共和国から海上コンテナで工作機械に隠匿された覚醒剤を密輸入した。同年11月までに、同男らを覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)等で検挙し、覚醒剤約237.4キログラムを押収した(神奈川、千葉)。

 
押収された覚醒剤
押収された覚醒剤

(2)薬物密輸入事犯の検挙状況

令和2年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は218件と、前年より245件(52.9%)減少し、検挙人員は235人と、前年より263人(52.8%)減少した。

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表3-9のとおりである。令和2年中は、薬物密輸入事犯の検挙件数・検挙人員が前年に比べ大幅に減少したが、薬物事犯全体の検挙状況に大幅な変動はみられず、薬物に対する根強い需要が存在しているものと考えられる。

 
図表3-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成23年(2011年)~令和2年)
図表3-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成23年(2011年)~令和2年)
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(3)薬物事犯別の検挙状況

① 覚醒剤事犯

令和2年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の60.2%を占めている。また、押収量は437.2キログラムと、前年より1,855.9キログラム減少した。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち約4割を暴力団構成員等が占めていることのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は7年連続で増加し過去最多となっており、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯である。近年では、面識のない者同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら大麻の売買を行う例もみられる。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

 
図表3-10 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成28年~令和2年)
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