第3章 組織犯罪対策

5 準暴力団等の動向と警察の取組

(1)準暴力団等(注)の動向と特徴

暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等を敢行している例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付けている。

注:準暴力団及びこれに準ずる集団

CASE

平成24年9月、東京都港区六本木のクラブ内において、暴走族の元構成員等を中心とする集団のメンバーの男(33)らが、店内にいた男性客を金属バット等で殴り死亡させる事件が発生した。警察では、この事件に関与したとして、主犯格の男について重要指名手配を行っている(警視庁)。

 
手配写真
手配写真

CASE

貸金業を営む男(59)をリーダーとする集団は、借用名目で金銭をだまし取る詐欺のほか、風俗営業店の無許可営業や覚醒剤密売等を敢行していた。令和元年5月までに、同男を含むメンバーら合計51人を、詐欺罪のほか、風営適正化法違反(無許可営業)や覚醒剤取締法違反(営利目的譲渡)等で逮捕した(山口)。

準暴力団等は、犯罪ごとにメンバーが離合集散を繰り返すなど、そのつながりが流動的である点で、明確な組織構造を特徴とする暴力団と異なる。準暴力団等には、暴走族の元構成員や地下格闘技団体の元選手等を中核とするものがみられるほか、暴力団構成員や元暴力団構成員がメンバーとなっている場合もある。

準暴力団等の中には、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を、更なる違法活動や自らの風俗営業等の事業資金に充てるなど、活発な資金獲得活動を行っていることがうかがわれる集団が数多くみられる。また、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が準暴力団等と共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような準暴力団等の中には、暴力団と準暴力団等との結節点の役割を果たす者が存在するとみられる。

 
図表3-7 準暴力団等の特徴
図表3-7 準暴力団等の特徴

MEMO 暴力団と関係を持つ準暴力団等の例

建設業を営む男A(22)をリーダーとする集団は、特殊詐欺事件を敢行しており、Aは複数の暴力団員とのつながりを持っていることが把握されていた。群馬・栃木・長野県警察は、令和元年10月までに、Aを含む同集団のメンバーら10人を詐欺罪等で逮捕したほか、Aとつながりを持つ暴力団員2人についても捜査を推進し、逮捕するに至った。

Aとつながりを持つ暴力団員のうち、任侠山口組(令和2年2月、絆會と改称)傘下組織の幹部の男B(41)については、Aから犯行指示を受けた「受け子」が使用するための拠点を、暴力団員であることを秘して不正に貸借していたことから、令和元年6月、詐欺罪で逮捕した。

また、別の暴力団員である稲川会傘下組織の構成員の男C(44)については、特殊詐欺事件で公判係属中のAが保釈逃亡した際に、逃走を手助けしていたことから、同年9月、犯人隠避罪で逮捕した。

 
暴力団と関係を持つ準暴力団等の例

(2)警察の取組

警察では、準暴力団等の動向を踏まえ、繁華街・歓楽街対策、特殊詐欺対策、組織窃盗対策、暴走族対策、少年非行対策等の関係部門間における連携を強化し、準暴力団等に係る事案を把握等した場合の情報共有を行い、部門の垣根を越えた実態解明の徹底に加え、あらゆる法令を駆使した取締りの強化に努めている。

MEMO 繁華街・歓楽街等における準暴力団等の取締り

準暴力団等の中には、繁華街・歓楽街等において、無許可の風俗営業店を営んだり、他の店舗の経営者らを襲撃したりするほか、強引な客引きや客に対する不当な高額請求、みかじめ料の徴収等を行っているものがある。警察では、こうした準暴力団等の情報の収集や集中取締りにより、準暴力団等の弱体化・壊滅を図っている。

 
繁華街パトロールの実施状況
繁華街パトロールの実施状況

CASE

風俗営業店の経営者の男(29)らを主要メンバーとする集団が、風俗営業店の利用客に対する恐喝や昏睡強盗等を行っているとの情報を入手したことから、部門の垣根を越えた歓楽街対策プロジェクトを立ち上げ、令和元年8月以降集中取締りを行った。同年12月に同男を風営適正化法違反(無許可営業)で検挙するなど、令和2年7月までに、同集団を含む準暴力団等のメンバー合計99人を検挙した(大阪)。

CASE

無職の男(21)をリーダーとする集団は、暴走族の元構成員等を中心に構成されており、不当に高額な料金を請求するガールズバーを営業するなどしていた。同集団は、警察の集中取締りにより解散届を提出したが、その後も主要メンバーが活動を継続していた。同男らは、令和2年5月、岡山県を拠点とする集団とともに、金属バット等を用いて風俗営業店の経営者らを襲撃した。同年10月までに、同男ら16人を凶器準備集合罪及び傷害罪で逮捕した(大阪)。

CASE

無職の男(37)をリーダーとする集団は、繁華街で営業を営む飲食店に対し、みかじめ料の名目で不当に金銭等を要求していた。同男らは、平成31年2月、飲食店の経営者に対して、「どこかの組と付き合いあるのか。ないのであれば俺らと付き合え」「俺の紹介するやつをこの店で働かせろ。キャッチをさせるから、そのキャッチが連れてきた客の売上げの50%を払え」などと、みかじめ料の徴収目的で脅迫した。令和元年6月、同男ら5人を恐喝罪等で逮捕した(警視庁、徳島)。



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