第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

警察活動の最前線

平穏な日常のために ~警察官として私ができること~


警視庁生活安全部生活安全総務課ストーカー対策室ストーカー対策第一係

小林 輝一(こばやし てるかず)

 
ピーポくん

ストーカー・DV事案は、「人身安全関連事案」と位置付けられ、全国警察が一丸となり、犯人の早期検挙や警告、適切な保護対策を講じるなど、被害者らの安全と安心を最優先に考えた職務を遂行しています。

ストーカー事案等については、加害者の被害者に対する支配意識が強く、事態急変の可能性が予測困難な点において、被害者の安全を確保するための「初動対応」と呼ばれる初期対応が非常に重要です。重大事案への発展を未然に防止できるかは、「初動対応」の良し悪しにかかっていると言っても過言ではありません。私は事案対応に当たる上で、「被害者の命の安全」を最優先に考え、迅速な事案の見極め、被疑者の検挙、被害者の避難措置を執るよう心掛けています。

また、ストーカー事案等については、誰もが被害者、加害者になり得る犯罪である上、犯罪意識、被害意識がない場合も多く、見えない犯人の姿に怯え、理不尽な現実と不安に泣き崩れる被害者を、私は何人も目の当たりにしてきました。

「困っている人を助けたい。」

その思いで警察官を志した私ですが、被害者等の不安を解消するこの職務こそ、警察官としての原点であり、国民の安全・安心の実現と警察官としての責務を果たすべく、被害者に寄り添いながら全身全霊を傾け、職務に励む決意です。

 
警視庁生活安全部生活安全総務課ストーカー対策室ストーカー対策第一係 小林 輝一

被害者の心情に寄り添った性犯罪捜査とは


前 大分県大分南警察署刑事課強行犯係(現 大分県警察本部刑事部機動捜査隊機動捜査班)

荒巻 雅美(あらまき まさみ)

 
ピンキーくん

「娘がずっと部屋に閉じこもって、ご飯も食べないんです。」

私が性犯罪被害者の母親から電話を受けたのは、聴取を終えた彼女と笑顔で別れた数日後のことでした。

彼女や母親には被害後は精神的ショックで心や体に変調を来すおそれがあることを説明し、彼女の精神面に注意を払いながらの事情聴取でした。

そんな彼女は、当初から涙を堪えて被害状況を説明してくれ、その気丈な振る舞いは、犯人逮捕のために私を含めた捜査員全員を奮い立たせてくれました。

それが一段落したとき、彼女は心のSOSを発したのです。私は、少しでも彼女の辛さを和らげたいとの思いから、時折連絡をして、彼女の好きな歌手、趣味等の話を続けていたところ、彼女の電話口の声も徐々に明るくなっていきました。そして、母親から食事が取れ、家族との会話も増えてきたと連絡が入った時は、本当に安心しました。

こうした経験を踏まえ、私は、性犯罪被害者と接する際は、少しでも精神的な負担を軽減するため、趣味等の会話や悩み相談を聞くなど、被害者と心を通わせるよう努めるとともに、被害者の表情や声のトーン等から心身の変調を確認するよう心掛けています。

性犯罪被害者の心情に寄り添った捜査とは何か?

被害者は一人ひとり性格や被害の状況も違うので一つの答えはありませんが、「被害者のために何ができるか」を常に考え、これからも被害者に寄り添った対応を心掛けていこうと思います。

 
前 大分県大分南警察署刑事課強行犯係(現 大分県警察本部刑事部機動捜査隊機動捜査班) 荒巻 雅美


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