第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第5節 犯罪被害者支援

1 警察による犯罪被害者支援

(1)基本施策

犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では図表2-95のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

注:135頁参照

 
図表2-95 犯罪被害者支援に関する主な施策
図表2-95 犯罪被害者支援に関する主な施策

(2)犯罪被害給付制度・国外犯罪被害弔慰金等支給制度

警察では、犯罪被害者等の経済的・精神的負担の軽減に資するため、犯罪被害給付制度及び国外犯罪被害弔慰金等支給制度を運用している。

 
図表2-96 犯罪被害給付制度
図表2-96 犯罪被害給付制度

犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者等に対し、犯罪被害者支援法に基づき、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年(1981年)1月に開始され、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。

国外犯罪被害弔慰金等支給制度は、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により死亡した日本国籍を有する者(日本国外の永住者を除く。以下同じ。)の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり200万円を、当該犯罪行為により障害等級第1級相当の障害が残った日本国籍を有する者に国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり100万円を、それぞれ支給するものであり、平成28年(2016年)11月から開始された。

(3)犯罪被害者等の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

注1:186頁参照(第4章)

注2:77頁参照

注3:77頁参照

注4:89頁参照

 
図表2-97 性犯罪被害者の特性に応じた施策
図表2-97 性犯罪被害者の特性に応じた施策

(4)関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県で、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等の関係機関・団体から構成される「被害者支援連絡協議会」が設立され、犯罪被害者支援のための相互の連携を図っている。

また、個々の事案において、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握した総合的支援を行うために、警察署等を単位とした連絡協議会「被害者支援地域ネットワーク」が構築されている。

さらに、よりきめ細かな犯罪被害者支援を行うため、全ての都道府県において、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定している。同団体では、犯罪被害者等の支援に関する広報啓発活動、犯罪被害等に関する相談への対応、犯罪被害者等給付金の裁定の申請の補助及び物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法による犯罪被害者等の援助を行っており、都道府県警察では、同団体に対し、犯罪被害者等の同意を得て、犯罪被害の概要に関する情報を提供することで、犯罪被害者等が同団体による支援を受けやすくなるよう努めている。

MEMO 大学生による犯罪被害者支援ボランティアの活動

平成29年11月、岡山県警察の協力の下、岡山県内の15大学等(令和3年(2021年)3月31日現在)の学生が集まり、犯罪被害者支援大学生ボランティア連絡会「あした彩(いろ)」が発足した。「あした彩」では、大学生が意見を出し合い、犯罪被害者遺族講演会の開催や犯罪被害に遭った児童の学習支援等、様々なボランティア活動を行っている。

「あした彩」の活動を知った他県の大学生が、犯罪被害者支援の取組を開始するなど、大学生による犯罪被害者支援の輪が全国に広がりを見せている。

 
あした彩による活動発表
あした彩による活動発表


前の項目に戻る     次の項目に進む