トピックス

トピックスIII 準暴力団の動向と警察の取組

(1)準暴力団の動向

① 準暴力団の台頭

近年、暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を敢行している例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付けている。

② 準暴力団の特徴

準暴力団は、犯罪ごとにメンバーが離合集散を繰り返すなど、そのつながりが流動的である点で、明確な組織構造を特徴とする暴力団と異なる。準暴力団には、暴走族の元構成員や地下格闘技団体の元選手等を中核とするものがみられるほか、暴力団構成員や元暴力団構成員がメンバーとなっている場合もある。

準暴力団の中には、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を、更なる違法活動や自らの風俗営業等の事業資金に充てるなど、活発な資金獲得活動を行っていることがうかがわれる集団が数多くみられる。また、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が準暴力団と共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような準暴力団の中には、暴力団と準暴力団との結節点の役割を果たす者が存在するとみられる。

 
準暴力団

MEMO 暴力団の組織構造

暴力団の組織は、一般に、その起源である博徒(注1)や的屋(注2)の習慣であった盃事(さかずきごと)といわれる儀式を通じ、構成員同士で擬制的血縁関係を結び、首領を親分、配下を子分、先輩を兄貴分等と位置付けている。それぞれの暴力団で名称の違いはあるものの、各団体では、首領たる「組長」の統制の下に、幹部やその他の組員が、その地位の上下に応じて階層的な組織を構成している。

注1:縄張内で非合法な賭博場を開き、そこから利益(寺銭)を上げることを稼業としている者の集団

注2:縁日、祭礼等に際し、境内や街頭で営業を行う露天商や大道芸人等の集団のうち、縄張を有しているもので、暴力的不法行為等を行い、又は行うおそれのあるもの

 
暴力団

(2)警察の取組

警察では、繁華街・歓楽街等における準暴力団による暴行、傷害等の犯罪の続発や準暴力団のメンバーと暴力団の密接な関係に着目し、これまでも、準暴力団に係る実態解明及び取締りの強化を図ってきたところである。準暴力団が、暴力的不法行為以外に、特殊詐欺やみかじめ料の徴収等の違法な資金獲得活動を行っている実態がみられるほか、暴力団との関係を深め、犯罪行為の態様を悪質化・巧妙化している状況がうかがえることなどを踏まえ、部門・所属の垣根を越えた実態解明の徹底に加え、あらゆる法令を駆使した取締りの強化に努めている。

 
繁華街パトロールの実施状況
繁華街パトロールの実施状況

MEMO 都道府県警察における取組

(1)大阪府警察

大阪府警察では、活動が活発化している準暴力団に対する取締りを強化しており、平成31年(2019年)2月までに、法外な料金を請求するガールズバーを営業する準暴力団の男(20)らを、他のバーの経営者らを襲撃する目的で金属バットを持って集まり催涙スプレーを噴射したなどとして、凶器準備結集罪等で逮捕した。また、令和2年(2020年)1月までに、上記準暴力団関与店舗の従業員に対する強要罪等で、対立する準暴力団の男(32)らを逮捕した。

両集団については、関係者を含め、平成30年中には約130人、令和元年中には約170人を検挙した。

令和元年9月には、準暴力団や不良集団に対する取締りを強化するための対策会議を開き、様々な犯罪に関わっているとみられる集団について、捜査部門だけでなく生活安全・交通部門等の部門の垣根を越えて情報共有し、実態解明を進めている。

 
取締り強化のための対策会議の実施状況
取締り強化のための対策会議の実施状況

(2)愛知県警察

愛知県警察では、名古屋市中心部の繁華街である栄地区を中心に、強引な客引きやぼったくり等を行っている準暴力団の情報を入手し、実態解明を推進している。解明された組織実態に基づく取締りを強化した結果、令和元年11月までに、傷害罪、恐喝罪、風営適正化法(注)違反(無許可営業)等で同準暴力団の関係者約40人を逮捕して同準暴力団を解散させるとともに、同準暴力団の関与する風俗営業店を全て廃業に追い込んだ。

注:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

CASE

関東連合OBグループ関係者の男(30)らは、平成29年2月から30年10月にかけて、不動産関連会社の従業員を装い、土地所有者に虚偽の買収話を持ち掛け、土地の売買契約に係る諸費用等の名目で、現金合計904万円をだまし取った。平成31年3月、同男らを詐欺罪で逮捕した(警視庁)。



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